お湯をそそぐだけで、まるで急須で丁寧に入れたかのような味わい。鹿児島県大隅加工技術研究センターが開発したフリーズドライのお茶が注目を集めている。
2024年、鹿児島県は荒茶生産量が初の日本一に輝いた。一方で、お茶を急須で淹れる習慣が薄れる中、リーフ茶の消費は減り続けている。こうした課題に立ち向かうため、フリーズドライの技術に着目したのが、鹿児島市に本社を置く老舗の茶問屋、鹿児島製茶だ。
「急須の味を“秒”で再現」をコンセプトに掲げ、急須で淹れたような味と美しい黄緑色を再現できるよう、数ある品種の中から茶葉を厳選。しかし、試作品第1号はキューブの形にすることはできたものの添加物不使用にこだわったため、すぐにボロボロと崩れてしまった。およそ2年かけて改良を重ね、原材料が知覧茶のみの「知覧茶CUBE」が完成。お茶殻ゼロで、どこでも、誰でも簡単に味わえる画期的なお茶。数量限定で販売を始めたところ、2000袋がおよそ1カ月で完売する人気ぶりだ。
緑茶を高品質に粉末・成型化したフリーズドライ技術は去年、特許を取得した。鹿児島製茶の「知覧茶CUBE」は、世界緑茶コンテスト2025で入賞し、新たな市場の開拓が期待されている。手軽でおいしいお茶を開発する現場に密着した。
<取材先データ>
鹿児島製茶株式会社
住所:鹿児島県鹿児島市南栄3-11
TEL:099-269-1221
HP:https://kagoshimaseicha.co.jp/
■「知覧茶CUBE」は6月7日からお茶の美老園で販売
大隅加工技術研究センター
住所:鹿児島県鹿屋市串良町細山田4938
TEL:0994-31-0311
HP:http://www.oosumi-kakou.com/
■番組で紹介したフリーズドライ技術は、鹿児島県内の事業者にのみに技術指導を行なっています。
取材後記
新茶シーズンの鹿児島県南九州市。茶畑に広がる鮮やかな緑と、ふわっと漂うお茶の香り。その中で出会った皆さんは、とにかく“おいしいお茶”に本気でした。
今回の取材でまず驚いたのが、1世帯あたりのリーフ茶の消費量がここ十数年でおよそ37%も減少しているということです。家庭や職場で毎日のようにお茶を飲む“お茶好き”の私にとっては、かなり衝撃的な数字でした。
2024年、そして2025年。荒茶生産量で2年連続日本一となった鹿児島県。そんな日本一の産地が、いま直面しているのが“急須離れ”です。手軽さが求められる時代の中で、「どうすればもっとお茶を飲んでもらえるのか」――。その答えのひとつとして生まれたのが、完全無添加にこだわったキューブ状のフリーズドライ緑茶でした。
フリーズドライのお茶と聞くと、“インスタント”のようなイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし開発現場では、急須で淹れた味わいや香り、美しい色合いを再現するため、想像を超える試行錯誤が繰り返されていました。崩れてしまうキューブ、強く出てしまう雑味…。課題が現れるたびに向き合い、少しずつ理想に近づけていく。その姿から伝わってきたのは、“本当においしいお茶を届けたい”という強い思いです。
お湯を注ぐだけで広がる一杯。その小さなキューブには、鹿児島茶の誇りと未来への可能性が、ぎゅっと詰まっていました。
(MBC南日本放送 / 上野祐助)
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