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EVの“覇権争い”が国内でも、テスラを抜いた中国BYDは「コスパ」で勝負

政府は2035年までにガソリン車の新車販売を禁止し100%電動化を目指す方針を示していますが、国内の燃料別シェアでEV=電気自動車は、今のところ1.5%。本格的な「EVシフト」はいつになるのか不透明です。その一方で、中国企業のBYDがあのテスラを抜いてEV販売台数世界1位になり、世界では激しいシェア争いが起きています。BYDは日本でも着々と店舗を増やしつつあります。1日にオープンしたばかりの福岡店を訪れると来店客が「コストパフォーマンス」に着目していました。

まだ「馴染みない」けれど・・・、テスラ抜きEV世界1位は中国企業


福岡市西区の商業施設・マリノアシティ福岡に1日オープンしたのは、中国のEVメーカー「BYD」の正規ディーラー店です。BYDは去年70を超える国と地域で約186万台のEVを販売。民間調査会社マークラインズによると、アメリカのテスラの約131万台を抜いてEVの販売台数で世界1位となりました。

BYDAutoJapan・東福寺厚樹社長「福岡は日本でも有数の自動車市場でもありまして、我々としても参入しがいのある大きな市場で、数多くのお客様に選択肢の一つとして認知していただければと思っております」

ショールームを備えた店舗は日本国内6か所目で九州初進出。販売するのはスポーツ多目的用=SUV「BYDATTO3」です。90度回転するタッチスクリーンはカーナビになるほか、動画や音楽も楽しめます。

RKB三浦良介「サンルーフを開けて!このように音声で指示できます」

カーナビのほかにもサンルーフや電動で動くシートなど、通常ではオプションになるものが標準装備されていて、価格は440万円、国から65万円の補助が受けられます。

来店客「中国のメーカーなのでちょっと馴染みがないので、どのようなものかなと見させていただいた」「中もとても豪華で素敵でした」「すぐは買えないかもしれないけど、将来的に買いたいなと思える所は50%あるかな」

フル充電にかかる時間は最大8時間(6kW)で、急速充電では30分で最大80%の充電が可能です。
 

バッテリーメーカーが完成車メーカーに、フル充電で470キロ走行


1995年にバッテリーメーカーとして創業し、2003年に自動車業界に参入したBYD。独自開発したブレードバッテリーで、長距離走行できるEVを実現しました。

BYDAutoJapan・森田修平さん「フル充電で470km走行可能でございます(けっこう走れますね、バッテリーはどこに?)車体の床下に積んでおります。床下に置くことによって安定性が非常に高くて、低重心の走りを実現しております」

今年1月末から日本での販売を開始し、2025年末までに日本で100店舗以上を目指します。BYDの日本進出について専門家はこう話します。

日経エネルギーNext・山根小雪編集長「BYDが日本に上陸することで、日本のEV市場は確実に底上げされる、広がって行くと思います」

日本で販売される乗用車の燃料別シェアは前年度、ハイブリッド車が51.0%、ガソリン車が40.3%で、EV=電気自動車の割合は1.5%にとどまっています。

ガソリン車のユーザー「EVにはあんまり興味がない感じですかね、設備も整っていないですし、充電に時間がかかりガソリンが早いかな」

福岡県によりますと、EV充電器は県内の597か所に812基が設置されています。ただし、急速充電できるのは半数以下の336基しかありません。政府は2030年までに公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置する目標を掲げ、2035年までにガソリン車の新車販売を禁止して100%電動化を目指す方針ですが、その中にはハイブリッド車も含まれています。

日経エネルギーNext・山根小雪編集長「日本の政策はEV一辺倒ではなくて、環境性能の高い車に対して補助金を出し日本の自動車産業と一緒に国内マーケットも作るスタンスを取っていると思う」
 

世界的な「EVシフト」にユーザーの反応は?


日本のEV市場でいま、人気が高まっているのが日産のEV「サクラ」です。価格は220万円、軽乗用車のEVという手軽さと国から55万円の補助金が出るというメリットで、去年6月の発売以来1年で累計販売台数が4万2000台を突破しました。

日産福岡販売マリノア店・小副川宏課長「8時間の充電時間になりますけど、180キロの走行できます。電気自動車に抵抗があるお客様も多いんですけど、サクラが出たことで低価格で乗ることができます。ガソリン代が高騰している中でランニングコストが抑えられる電気自動車が、今後より一層普及していくのではないかと思っております」

脱炭素社会の実現に向け、電気自動車にシフトする動きが世界中で加速するなか、中国メーカーの日本進出は、日本の自動車業界やユーザーにどんな変化をもたらすでしょうか。

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この記事を書いたひと

三浦良介

1999年入社、テレビ営業部、大阪支社勤務を経て2011年から情報番組のディレクターを務める。2016年から報道記者として政治・経済を中心に取材奮闘中。