紙の書籍や雑誌の推定販売額は昨年9647億円で、50年ぶりに1兆円を下回ったというニュースが今年初めに流れました。1996年の2兆6564億円がピークだったということですから、この30年で半分以下になったということです。
教科書のデジタル化も進んでいきますが、そんな中でもやはり、紙の本のよさを感じる人は多いようです。大型連休は読書という方もいるかと思いますが、どんな本を読めばいいか分からない、どんな選び方をすればいいのかと悩む人は少なくないようです。
5月1日放送のRKBラジオ『立川生志 金サイト』に出演した毎日新聞出版社長の山本修司さんが、本との出会いについてコメントしました。
書店は「予定していなかった1冊」に出会う場所
今年の大型連休は、中東情勢の緊迫化による飛行機の燃料サーチャージや宿泊費の高騰などで、飛行機や車での移動を避けて、近場での観光などが人気で、ある調査では「家の掃除をする」という人も3割以上いて、掃除道具の売れ行きも好調だということです。巣ごもりという中で、または行楽の移動中に読書を、という方もおられるかと思い、今日は「本との出会い」をテーマにしました。
私は出版社の社長になる前に長年毎日新聞社にいたのですが、実はそのころから書店の方々とご縁がありました。例えば、全国展開していて福岡でいえば西新やららぽーと福岡、小倉駅前などにお店を構える「くまざわ書店」の熊沢真会長とは、私が毎日新聞西部本社代表として小倉にいたときにお酒をご一緒する仲でした。
また、丸善の西川仁社長は私が福岡本部勤務だった2003年ごろ、天神MMTビルの「ジュンク堂書店」に務めておられて、私がよくそのお店に行ったあと、その近くのシアトルズベストでコーヒーを飲みながらサボっていた話をして盛り上がったことがあります。
本と出会う話ですが、このほど東京の本屋街として知られる神田神保町の老舗「三省堂書店」が新しいビルに建て替えて3月に新装開店し、そのお店の作りが話題になっています。
普通の書店は天井近くまで高い書棚があって、アルファベットや数字で分類されて本が配置されていますが、これはどちらかというと、欲しい本にたどり着きやすい作りといえます。
三省堂書店の場合には、「歩けば、世界がひろがる書店。」がコンセプトで、例えば1階は棚田のように中心から奥へ行くほど書棚が高くなり、全体を見渡せるような作りで、別の階は洞窟に入り込んだような感覚を覚えるような空間があり、全体を回遊するような雰囲気です。
お店を「予定していなかった1冊に出会うことができる場所」と位置づけています。アマゾンでポチッと買うのは楽で簡単なのですが、やはり書店に足を運んで本と偶然に出会う楽しさは多くの方に味わってほしいという考えが徹底されています。
「本の案内人」としての書評とブックカフェの活用
ちょっと手前味噌になってしまうかもしれないのですが、私は新聞や雑誌の書評がとても質の高い「本の案内人」になると考えています。全国紙では毎日、朝日、日経が土曜日、読売が日曜日に書評欄を掲載していますが、これらはその本を読まなかったにしても参考になる内容で、本の紹介にとどまらず、書き手独自の視点や文体、解釈によって築かれた「一つの文学」といえるものです。
書評を担当するのは毎日新聞では池澤夏樹さんや養老孟司さんといった、一流の作家や学者、有識者で、その内容は折り紙付きなのです。書評欄は、毎日新聞出版の週刊誌『サンデー毎日』や『週刊エコノミスト』をはじめ雑誌にもありますので、ぜひ本選びに活用していただきたいと思います。
書店によっては、こうした書評を掲示して紹介されている本を並べていますので、ふらっと行ってみるのもいいと思います。書店での本との出会いを書評にアドバイスされる、いわば「ハイブリッド」な本選びといえるかもしれません。
それからいわゆるブックカフェですね。私は福岡勤務時代にはよく、六本松の蔦屋書店に行っていたのですが、ブックカフェだと本を読んでいればゆっくりと過ごすことも許されています。
私は一度行きたいと思いながらまだ行けていないところがあるのですが、私設図書館にブックカフェを併設した京都の「鈍考」という予約制の施設で、建物は切妻屋根と瓦ふきの下屋(げや)という作り、敷地内には小川も流れて、日常から離れた静寂な環境の中で本に触れることができるそうです。
最近は「ブックホテル」もあって、一度都内で泊まったことがあるのですが、さまざまな本を手に取って、ホテル内のソファや自室のベッドの上でも読めるという環境もいいものです。
言うまでもないかもしれませんが、芥川賞や直木賞、本屋大賞といった文学賞を受賞した作品は、作家や編集者、書店員という「本のプロ」が選んだ作品ですので、過去のものも含めて、選んでみるのもいいかと思います。
「考える力」を育む紙の教科書と、電子との使い分け
最近、ちょっと気になる記事が出ていたのですが、政府が正式な教科書として2030年度に小学校から導入する「デジタル教科書」について、松本文部科学大臣が先週、衆議院の文部科学委員会で、小学校4年生以下はデジタル教科書のみの使用を「認めることは適当ではない」と述べました。さらに、国語と社会、道徳については、学年を問わず「当面認めるべきではない」という考えを示しました。
これは何を意味するのか、ということですが、考える力を育み、記憶を定着させるためには、紙の教科書が必要だということなのです。いち早くデジタル教科書に移行したスウェーデンなどの国では、紙に戻る動きも出ていまして、トントンと進んだように見える教科書のデジタル化にいま、待ったがかかったということです。
私が日ごろ多くの人、特に社会的な影響の大きな人と会って話していますと、ビジネス本などはかさばらずに読めるキンドルなど電子で、古典や小説など自分の生き方などに影響を与えそうな本は紙で、という人が大半です。
紙と電子をうまく使い分けているのですね。また、書店でたまたま目に付いた本、デザインに惹かれて手に取った本など、偶然の出会いだった本に影響を受けたことは少なくないと言っています。
この連休、ふらっと本屋さんに立ち寄って、偶然の出会いを求めてみるのもいいのではないかと思います。
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