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本土復帰50年の沖縄県知事選・基地問題と並んで注目したい貧困問題

沖縄が本土復帰して今年で50年。その沖縄の未来を決める沖縄県知事選挙が8月25日告示された。沖縄と言えば忘れてはいけない基地問題。しかし、それと同じくらい深刻な貧困の問題についてRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演した飯田和郎・元RKB解説委員長が解説した。  

知事選の争点は辺野古問題

今年2022年は日本への復帰50年。その節目の年に実施される知事選を考えたいと思います。多くのメディアは「争点は米軍普天間飛行場の辺野古への移設に関する賛否」としています。立候補した3人の現職、新人それぞれが基地移設への考え方や賛成・反対の立場を明らかにしています。

 

安全保障から考えると、日本の国土の中で沖縄県は0.6%の面積しかないのに、そこに全国の70%の超える在日米軍の専用施設・区域あります。最近では、中国が台湾周辺の海域で軍事演習を実施するなどして、台湾に近い与那国島周辺では、演習のミサイルが落ちてきて漁民の方々が操業を制限されるなど、影響が出ています。このことから、在日米軍が集中する沖縄は台湾有事となれば、まさに最前線になります。

 

過去の沖縄県知事選を振り返ってみましょう。2014年と2018年の知事選は基地移設反対派が勝利していました。ただ、参院議員選挙でみると、賛成派と反対派の得票差が2016年の参院選は10万票余りだったのが、2019年には6万票余り、今年7月には2900票差ということで、僅差となりました。得票率で0.5%。そのような投票動向が今回の知事選挙にどのような影響を及ぼすかが注目したいと思います。

沖縄に残された課題は基地問題だけではない

今日は別の角度、基地問題以外に注目して話します。内閣府が出した「子供の貧困に関する指標」を基に話します。これは様々な深刻な問題を表しています。まず沖縄県民1人当たりの所得は全国で最下位、全国平均の7割程度です。さらに、母子家庭出現率が全国で1位、非正規雇用率も、高校中退率も全国で最も高い。そこから子供の相対的な貧困率は29.9%。全国平均が13.5%ですから、2倍以上ということですね。

 

さらに新型コロナウイルス禍が追い打ちとなっています。沖縄県が5月に発表した独自調査では、子供がいる世帯のおよそ3割が貧困状態にあり、新型コロナの影響で収入が減った世帯が6割以上という結果になりました。

 

沖縄の場合、多くの県民が観光業に依存しているという背景もあります。新型コロナの影響で、県外や外国から沖縄に気軽に訪れる状況ではなかったため、ホテルや運輸だけではなく、その周辺産業の方々も影響を受けているのではないでしょうか。

天皇陛下も言及した負の連鎖

沖縄の問題の中で気になったことがあります。今年5月15日に沖縄本土復帰の記念式典がありました。オンラインで出席された天皇陛下のお言葉を少し紹介しましょう。

『沖縄には今なお様々な課題が残されています。若い世代を含め、広く国民の沖縄に対する理解がさらに深まることを希望するとともに、今後とも、人々の思いと努力が確実に受け継がれ、豊かな未来が沖縄に開かれることを心から願っています。』
沖縄復帰に関する式典に出席された歴代の天皇陛下が、この「様々な課題」、つまり沖縄の今の課題について言及したのは初めてです。「沖縄の課題」と聞くと、基地問題だと思います。ただ私は、先程話したこの貧困など、県民の間に存在する「負の連鎖」に関しても天皇陛下は心を痛めておられるのではないかと思います。

最も恐れることは「沖縄への無関心」

私は沖縄の問題を考える時、ある人のことを浮かべます。一昨年亡くなった沖縄出身の芥川賞受賞作家、大城立裕さんです。琉球や沖縄のそれぞれの時代を見据えた作品を数多く遺しました。大城さんの作品の一つに「小説・琉球処分」があります。琉球王国は、日本と中国の二重支配を受けてきましたが、明治政府は琉球王国を中国の清から切り離し、沖縄県として日本に編入した過程を描いた作品です。

 

この本を読み返すたび、いわゆる琉球処分、地上戦が行われた戦争、米国の統治、そして本土復帰といった沖縄の歴史に思いが至ります。沖縄に住む方々の複雑な思いはどこにあるのか。きょう、お話しした深刻な「貧困の連鎖」も、日本の他の都道府県と違う歩みと無関係ではないでしょう。

 

我々、福岡・佐賀両県に住む者は、沖縄知事選の有権者ではありません。ただ、せめてこの復帰50年の年の知事選挙では、何が語られ、沖縄どうなっていくか見つめ、思いや関心を寄せたいと思っています。沖縄の方々も本土に住む我々の沖縄への無関心こそ、最も恐れることではないでしょうか。

 

投開票日は9月11日です。今こそ、沖縄を見つめてみませんか。

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