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西糸屋山荘で教わる上高地の魅力

上高地・河童橋エリアにある「上高地・西糸屋山荘」。この宿のご主人・奥原宰さんは、高校~大学時代、山岳部に所属して世界中の山を歩いてきた方です。そんな奥原さん曰く「上高地は特殊なところです」と。「これだけコンパクトに、きれいな水と森林の多様さと岩山、すべてがひと目でみられるというところはなかった。もっと大きな山とかはいっぱいありましたけど、こんなに全てが“ぱっ”と見えるというのはないですね。河童橋から見ていただければわかっていただけると思いますけど。」なんでもスイス人のお友達が上高地に来てびっくりしてたそうです。「こんなにコンパクトに見えるんだ!」って。すごいぞ、上高地。アルプスの本場・スイス人も驚くほどの美しさ。「神様が降り立った地=神降地と書いたりするくらいですからね。」と、奥原さん。

四季折々の美しい上高地を知り尽くした奥原さんに、夏の上高地について、教わりました。さすがの上高地でも昼間は暑く夏らしい気温になりますが、朝晩は寒い。朝なんて、何か羽織ってないと歩けないほどです。夜はクーラーなしで熟睡できる気温。お盆を過ぎると朝の気温が10℃を切って5℃とかに近づいていきます。しかし、お昼だけ上高地に来た人は「なーんだ。上高地でも夏は暑いんだ~。」って、「なんで上高地が暑いんだ?」って、帰っちゃうんですって。「そういう人たちはいいとこ知らないで帰っちゃう、かわいそう…。上高地は3日以上!なんですよ。」と、奥原さん。要は、人間の体の温度だそう。人間の体は、ほぼ水でできています。そうすると、長い期間暑いところで生活していると体の温度が上がっていて、上高地に1日来ただけだと体は熱いままなんだそう。表面的には涼しいんだけど全体的に涼しくならない。順化(馴化)しないっていう感じだとか。丸一日上高地にいるとだんだん涼しくなってきて、2日目にはもう順化するので、そこからはもうすごく涼しく感じられる!ってことなんですって。それで“上高地には3日間”となるんだそうです。なるほど、体の芯まで上高地が沁みこむまでに3日ってことですね。「じゃあ、着いた日=1日目は、河童橋から明神池までをぐるっと周る2時間コースを歩くぐらいがいいんですね?」とお尋ねしたら、「初日は到着するだけでいいんです。荷物をほどいてお昼寝でもして疲れた体を休めてください。」と、奥原さん。「どうしても歩きたければ、夕方、梓川の川原に下りて散歩するくらいにしてください。で、2日目からばしーっ!と歩けばいいんです。2日目からが勝負なのに帰っちゃう人が多くてもったいない。」んだそうですよ。
で、2日目に行くべきオススメの、でもお手軽な行き先を提案してもらいました。危険な登山じゃなくて、トレッキング程度。ちょっとだけ登るようなところにチャレンジするとおもしろいんですって。行き先は「岳沢」。河童橋エリアから標高差でいうと600mほどのところで、ゆっくり登って2時間半くらい。子供でも十分行けるところだそうです。1時間も登ると見晴らしのいい場所に出るし、たとえ上の方が曇っていたとしても、上高地の俯瞰のすばらしい景色が楽しめるんですって。晴れてたら穂高の山の方も全部見えて、これまたすばらしいのだそう。「しかも、その見晴らしのいい場所に出るまでの間は原生林があって、ほかと比べても一種独特の登山道なんですよ。この原生林に入るだけだったら登山道の入り口から10分入るだけでハードルが高くないし、運動靴で行けますよ。」と、奥原さんの優しいお言葉。ああ、そのくらいだったら根性なしの私でも行けるわ!と張り切って出発!小雨混じりの空模様でしたが、それが原生林の静寂を増してくれた感じでした。吸い込まれそうな心地よさに包まれた自分の周りで、水の流れる音や鳥の鳴き声が緩やかな渦を巻いています。故・筑紫哲也さんも感激したこの原生林。絶対行くべきです。河童橋から半時計周りに10分くらい歩いたところにある岳沢登山道入り口から、さらに10分くらいすすめばOK。
さて、右一番下の写真は原生林で見かけた風景。木の陰から顔を出したクマみたいでしょ?今回見つけた宝物のひとつです。

お世話になった西糸屋山荘。名前からすると山小屋っぽくて「本気の登山人じゃなきゃダメかなあ」なんて思ってましたが、どっこい、普通の旅館タイプの宿なんです。でも、木がたくさん使ってあって、山小屋を思わせる雰囲気や上高地がよくわかる資料や本、写真もたくさん用意してあって、楽しい時間が過ごせます。料理もおいしいし、お風呂では湯船に体を伸ばしながら穂高のお山が見えるという工夫がしてあります。ちなみに「上高地は3日間以上」という奥原さんの思いを反映して、連泊しやすいように宿泊料を2泊目は1割引、3泊目以降は2割引になさっているそう。居心地よく滞在できるすてきな宿でした~。

□ 上高地公式ウェブサイト → http://www.kamikochi.or.jp/
□ 上高地西糸屋山荘 → http://www.nishiitoya.com/

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