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「若者や高齢者を守れ」増える消費者トラブル 成人年齢引き下げやオンライン取引増加で

トラブルから消費者を守る制度を拡充した「改正消費者契約法」が施行されました。消費者は契約を取り消すことができる範囲が拡がったほか、事業者側には消費者の年齢や心身の状態に合わせた情報提供などが求められています。


◆若者や高齢者が巻き込まれるケース増加
消費者契約法とは、消費者と事業者の間で結ばれる契約に関し、契約の取り消しなどを定めた消費者の利益を守るものです。高齢化やオンラインでの取引が急速に進んでいること、成人年齢の引き下げなどに伴い、契約トラブルが増えています。
国民生活センターによりますと、成人年齢が引き下げられた2022年度、18~19歳から寄せられた消費者トラブルの相談件数は9907件で、脱毛エステや出会い系サイト・アプリなどのトラブルが増えています。「親に相談したい」と伝えても、「親に言っても反対される」とその場で契約を迫られたケースもあったということです。


◆改正で何が変わるのか? 有識者に聞く
今回の改正のポイントについて、改正に向けた有識者会議にも加わった専門家に聞きました。

平尾嘉晃弁護士「高齢者・若年成人の、消費者契約における被害防止のための取消権を追加しようということが、大きな課題でした。1つは勧誘目的を告げずに、退去困難な場所に同行して勧誘したケースです。もう1つは、威迫する言動を交えて相談の連絡を妨害するというような場合に取消権がある」

今回の改正では、事業者側に求められることも増えています。

平尾嘉晃弁護士「1つは、解約時の違約金についての説明をきちんとすることです。2つめとして、年齢心身の状態に考慮したうえで、契約内容を説明しなくていはいけない、という義務が課されます。3つめは、事業者の責任を免れる『免責条項』に関してきちんと意味がわかるような条項にしないとならない、と定められています」


◆「努力義務でも、法律上明確にされた義務は重い」
罰則がない努力義務であっても、法律に定められることが大きな意味を持つといいます。

平尾嘉晃弁護士「努力義務であっても、法律上明確にされた義務です。努力義務だから軽いのではなく、法律上明記されている以上は重い。裁判になった場合、この義務に違反していた場合は不法行為責任が生じる。裁判になった場合に、大きな効果を持ち得る」


◆改めて「改正のポイント」を見てみる
まず消費者側。契約を取り消すことができる「取消権」の範囲が広がりました。これまでも、「営業マンが強引に居座り続ける」「消費者にとって不利な情報をわざと伝えない」などの場合に、契約を取り消すことが認められていました。そこに、「立ち去るのが難しい場所へ連れて行かれての勧誘」「威迫=脅しによる相談妨害」などが加わっています。相談妨害というのは、例えば「親に相談したい」「子供に相談したい」と言ったのに、「1人で決めないとだめだ」などと迫られて契約してしまうケースです。こうした場合も、契約を取り消せるようになりました。

続いて事業者側の「努力義務」。1つは「契約を結ぶときに消費者の年齢や心身の状態、知識や経験のレベルに合わせて情報提供をすること」です。もう1つは、「消費者が契約を解除するために必要な情報を提供すること」です。
音楽や動画配信などを毎月定額の料金で楽しむ「サブスクリプション」を利用している方も多いと思いますが、「解約の仕方が分からない」「見つけにくい」といった相談が多く寄せられているそうです。
今回の改正で、事業者側は解約の方法を消費者に分かりやすく伝えることが求められています。


◆「約款? 読んでないです」18歳大学生に聞く
詳細な条件などを記した「約款」をちゃんと読んでいるのか、契約をめぐって困った経験はないか、18歳の大学生に聞いてみました。

法学部1年「読んでないです。長ったらしいんで」
商学部1年「何ページもあったりして、どこが大事なのかもまずわからずに、もういいかなって。(契約の)更新日の前に解約したかったんですけど、その日を間違えていて、次の月までお金を払ってしまった、みたいな」
スポーツ科学部1年「(電話で)『ワイファイの契約をどうですか』と言われて、断りにくかったなって思います。説明が長過ぎて、分からないところが多かったですね」

成人年齢が18歳に引き下げられ、親の承諾がなくても契約できるようになった一方で、知識や経験が少ないためにトラブルに巻き込まれたり、悪質な業者に狙われたりすることもあるということで、注意が必要です。国民生活センターは、トラブルにあったときには1人で悩まず、最寄りの消費生活センターに相談するよう呼びかけています。

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