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香川照之のコメントを音楽プロデューサー・松尾潔が批判 「不快な思い」に謝罪する人々

性加害騒動をめぐりTBSテレビの情報番組『THE TIME,』で香川照之が「不快な思いをさせた方に…」と謝罪した。不祥事を釈明する場でよく使われるこの“便利な”フレーズ、音楽プロデューサーの松尾潔さんはレギュラー出演しているRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、「本質に触れていない」と批判した。  

森喜朗と香川照之

男性として生まれるということは、この国ではいまだ、マジョリティーとして世に出てくるようなものです。その自覚がないまま、その優位性をあたかも自分の手柄であるかのように振る舞っている年長の男性が、最近よく問題になっていますよね。

 

その中でも筆頭格が森喜朗さん。東京オリンピックの組織委員会で重責にあったわけですが、女性蔑視発言がありましたね。「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と。それに対してスポンサーだったトヨタの豊田章男社長がノーを突きつけました。

 

政界の方が財界より遅れているのかな、みたいな印象さえ受ける話でしたが、そのトヨタのCMで「顔」になっていた香川照之さんが、やはり女性に対して、言葉ではなく、今回は性加害ということで糾弾されています。

「不快な思いをさせたのであれば…」というフレーズの違和感

トヨタも森さんに対してと同じような、ある意味、筋の通った態度でCM契約を更新しないという対応でした。そしてTBSテレビは「今後出演しない」と発表。金曜日の放送でお詫びしていましたけど、こういうとき、決まり文句みたいになっている「不快な思いをさせたのであれば…」というフレーズ、どう思いましたか?

 

「不快な思いをさせたのであれば」って政治家の人たちもよく使う、一見良心に訴えているような印象があるんですが、そこが間違っているんだと僕は思います。「私はこういうことをやりましたけれども、それでお気を悪くさせたのであれば」っていう言い方。でも、触ったっていう事実で、もうアウト。不快な思いをさせたとかそういうことじゃなくて、もうそれ以前の問題です。

 

例えば万引きをするっていうのはもうアウト。相手が不快な思いをしようがどうだろうが、もうその行為自体がアウトっていうふうに、犯罪として私たちは認識すると思うんですが、香川さんがしたこと、今報道されているものを見た限りでは、事実がもう既にアウト。という認識を持たなきゃいけない。

梨園という“伝統”の世界

飲食店でのホステスさんへの行為を「お金を払っているわけだし、ある程度許容範囲だと思っていたんだけど」と考える人もいるかもしれません。でも、やりすぎなんですよ。暴力って自覚しないままの暴力は、ほかにもあります。「お酒飲みなさいよ」というアルコールにおけるハラスメントだとか、「一緒に寝ろよ」的なことをちらつかせたようなことは、今の時代、暴力と言っていいでしょう。

 

元自衛隊員の五ノ井里奈さんが、パワハラだけじゃなくてセクハラ、モラハラ、マタハラ、いろんなことがあったっていうことを訴えていますが、こういったことと地続きです。香川さんがいる歌舞伎の世界、梨園と言われるところは、本当に特殊な形で、男性の優位性というのが維持されてきたところです。

 

もっと言うと、梨園は“生まれた家”がかなりの部分を決めてしまうという、今の一般社会ではあってはならないことが全部そのまま、伝統芸能という名のもとに、そのまま保存されている世界です。しかしそういう面も好ましく思って、芸を見に行くファンもいるという、ややこしい構造があります。私も歌舞伎によく足を運ぶ一人なので、難しい問題が今こうやって顕現しているな、と思います。

市川海老蔵と香川照之(市川中車)

こういう事件が起きたときに、矮小化しないことが大切だと思っています。同じ歌舞伎界では、かつて海老蔵さんの件もありました。海老蔵さんと香川さんとでは全然違うじゃないかという指摘もあるとは思います。ずっと歌舞伎の家で育ってきた海老蔵さん、一方香川さんは40歳を過ぎて市川中車を襲名。元々そういう家柄であるとはいえ、テレビドラマとかにおけるステータスと、歌舞伎におけるステータスが全然違うってところで、ご本人も気持ちのバランスを取りづらかったのかとか、いろんな憶測が飛び交っています。

 

しかし「やっぱり歌舞伎はね」というふうに、梨園全体の構造的な問題として片付けるのはちょっと怖いことだなと思います。では、我々は何をすべきかっていうと、自分たちのそれぞれの生活で、同じようなことをやっていないかという意識を一人一人が持っていくこと。それが、この世の中を少しでも良くするために必要じゃないかなと思いますね。

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