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木曽路を行く2

「さわやか信州レポート」コーナーのオープニング曲は「信濃の国」。長野県民なら誰でも歌える、年代によっては“踊れる”県民歌です。長野県の自然、名産、歴史、偉人などがたっぷりと盛り込まれた歌詞が、1~6番まで並びます。その中で、5番に♪朝日将軍、義仲も~♪と歌われる木曽義仲。ゆかりの地は、木曽町。平家追討の旗揚げをした宮の越地区に、資料館である「義仲館」と菩提寺の「徳音寺」があります。その名前と、義仲に愛された巴御前のことはぼんやりと知ってましたが、義仲が悲運の武将であったことは、義仲館で初めてきちんとわかりました。後白河法皇の命を受け平家を討ったものの、その法皇によって追われて亡くなったこと。義仲の失敗が鎌倉幕府を開く際の教訓となったこと、牛の角に松明を灯して平家の大軍を撃滅した倶利伽羅峠の戦いが有名だということ、幼なじみでもあった巴御前は才色兼備かつ力持ちだったこと…。義仲が、母上や巴御前、四天王とともに眠る徳音寺は、静かでいいお寺でした。
□信濃の国 → http://www.pref.nagano.jp/soumu/koho/kenka/kenka.htm
http://sbc21.co.jp/shinano/
□木曽町観光協会 → http://www.kankou-kiso.com/rekishi/yosinaka.html

時代はぐっと近づいて、大正時代のすばらしい近代化遺産がありました。しかも九州とご縁がなくもない。それは木曽川にかかる「桃介橋」。大正19年に完成した木の吊り橋で、全長247m、幅2.7m。下流にある読書(よみかき)発電所建設のためにかけられました。木組みの美しさと石積みの橋脚やコンクリートの主塔のコンビネーションがすばらしい!しかも木曽川の川幅が広いところを選んでかけられたそうで、技術への自信と気合いの見せどころだったってことでしょうか。この橋をかけたのが電力王と称された福沢桃介。福沢諭吉(大分出身)の娘婿です。しかも、桃介の愛人は、オッペケペー節の川上音二郎(博多の人)の妻で日本初の女優・川上貞奴です。あ、二人がいい仲になったのは音二郎の死後ですから。でも桃介と貞奴の出会いは、桃介が慶応義塾の塾生で貞奴が14歳のころ。貞奴が野犬に襲われたところを桃介が助けたのがきっかけで、恋に落ちたのでした。時を経て結ばれた二人ですが、実生活だけでなく事業面でもパートナーだったそうで、貞奴は真っ赤なバイクに乗って、桃介の発電所の建設現場に足を運んだのだとか。橋のそばに、二人が過ごしたレンガ作りのお屋敷があって、桃介資料館として開放されています。桃介橋、日常の橋としても現役ですから、登下校時には学生さんたちがわんさか歩いてるんだそうです。

さてさて、木曽は日本酒のおいしいところでもあります。「中乗さん」というお酒を作っている「中善酒造店」におじゃましました。創業以来150年をこえる梁や柱が残る店構えがとっても趣があります。「木曽の自然を生かした酒を造ってます。色気づいてないというか地味かもしれませんけど、地元食材に合わせられるお酒です。」と、取締役の南俊三さん。確かに、しっかりと気骨のある、主張のある味わいでした。9月のあたまに限定販売される「中乗さん~ひやおろし」は、予約してでも買いたい美味しさです。ちなみに、中乗さんというのは、民謡・木曽節に♪木曽のなあ~中乗さん~♪と歌われた人々で、木曽川に流して木材を運んだ際に木材の上に乗って運んでた人たちのことだそうです。木曽の酒蔵は、木曽川を挟んで御嶽山からの水を使ってるか、駒ケ岳の水を使っているかに分かれますが、それぞれに味が違うんですよ~。好みの方を見つけるまで、がんがん飲んでみましょう。ちなみに中乗さんは御嶽山からの水。
□中善酒造店 → http://nakanorisan.com/

また、木曽らしいものとしては木製品が挙げられます。南木曽町(なぎそと読みます)には、木を加工する職人さんたちが集まった「木地師の里」があります。おもにろくろを使って、木を回しながらカンナやノミを当てて、椀やお盆茶器といった日常雑器などがたくさん作られていました。野原工芸の野原廣平さんは、ろくろでボールペンやシャープペンシルの軸も作ってらっしゃいます。木材によって、色や持ち味などが違っておもしろいんですよ~。また息子さんはスピーカーなども作ってらして、ユニークな作品が並んでました。木曽の寒さが木を素直に、目の詰まったよいものにしてくれるそうです。もとは滋賀県が木地師の里だったそうですが、ご先祖様たちは、よりよい木を求めに求めて木曽にたどり着いたのだそうですよ。

また南木曽の工夫あふれる防寒着「なぎそねこ」も販売中。綿入れの背中の部分だけみたいなウエアで、リュックサックを背負う要領で身につけます。家事をするのに、檜笠を作るのに、腕周りがじゃまにならないのがいいという伝統の防寒着だそう。
□野原工芸 → http://www.nohara.jp/index.shtml
□南木曽観光協会 → http://www.town.nagiso.nagano.jp/kankou/index.html

長野県には、国宝ならぬ県宝というのがあります。福岡でいうなら県指定文化財、みたいなもんでしょうか。その県宝に指定されているのが、藤原家住宅。読みはふじわらではなく“ふじはら”。馬籠宿から妻籠宿に向かう途中にある大妻籠集落に近い山辺にあるのですが、この家が長野県内で最も古い民家のひとつといわれています。17世紀半ばの建築だそうで…。350年くらい前の建物ですよ~。切妻作りの昔の家は、土間、囲炉裏、太い梁…そして木曽らしい石積みの屋根。今は解体復元されて建築時の大きさに縮小されてますが、昭和22年までは藤原さん一家が普通に生活していて、座敷などが建て増しされていたそうです。奥さん曰く「冬は寒さが-10℃くらいになってましたから、コップの水が朝、凍ってたんですよ」と。りっぱな家ですが、木曽特産のヒノキは使ってません。「檜は使えなかったから、ほとんど栗の木。昔は幹一本首ひとつっていって、罰せられてたからね。」とのこと。そういえば、桃介資料館に留置場がありました~。

この藤原家住宅の奥さんが、敷地内で民宿をなさってます。宿の名前は「旅籠下村」。こちらの建物は総ヒノキ造りだそう。そういえば、2人用浴槽だけどお風呂もヒノキだった。宿では、木曽のお母さんのごはんとおしゃべりで楽しく過ごせます。宿のまん前で作っているお米や野菜が食卓にあがるのも楽しみなところです。朝ご飯から、白ご飯と栗赤飯が両方出たんですよっ。

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