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信州のおばちゃんのおもてなしの心

映画「岳」では、山小屋のおかみさん(市毛良枝さん)が深い優しさで山を訪れる人を、山で生きる人を包み込みます。山にいるおばちゃんのみならず、信州のおばちゃんは、飾り気がないけどあったかい人が多い気がします。お上手は言わないけど、その言葉には嘘がないというか…、ストレートな物言いと言葉にしたままの分量の思いが表現の中にある感じ、でしょうか。そんなおばちゃん達の気質がよく現れているのが「お茶」。昔から各家庭で、よく「お茶」しているのだそうで。「まあ、寄ってきましょ(お寄りになってください)」「お茶でも飲みましょ(お茶を飲んでいってください)」と誘い合って、お茶宴会が始まるんだそうです。しかも、九州人には想像も出来ないようなお茶会が。そんなこと聞いちゃったら、ねえ!お願いしました。「あたしをお茶に呼んでください…。」図々しいにもほどがありますが、願いを聞いてくださったのが、安曇野市の長谷川さん。84歳のおばあちゃまのやさしさに甘えさせていただきました。「普通のお茶しかないけど、まあ、よってきましょ。」と、コタツのお部屋に通していただきました。

さあ、ここで普通よそのお家にお邪魔したときのお茶を思い浮かべましょう。湯飲みに入ったお茶と、小皿にのったお茶菓子、もしくは大皿にお菓子やおせんべいが載っているのを各々いただく…感じが基本でしょうかね。信州では…。コタツの上にどーーーんとてんこ盛りのお茶菓子が、すでに鎮座しています。あ、あれ?おばちゃん?4人でこんなに?山盛り?と思ってたら、おばちゃん、どーん、どーんとお漬物を並べます。野沢菜~。大根×2種類~。赤ダイコン~。梅漬け~。煮物~。おやき~。お、おばちゃん…。もうコタツに載らないよぉ…。で、お茶がこぽこぽこぽ…。しかも、お茶が…どんどんどんどん、注ぎ足されるんです。ちょっと減っては、こぽこぽこぽ…。半分過ぎては、こぽこぽこぽ…。「これは、部活動の酒宴ですかっ!?縦社会の飲み会ですかっ!?」って、突っ込みたくなるくらいエンドレス…。湯飲みが空になることはありません。おばちゃんの傍らにはポットが置いてあるままです。おばちゃん曰く「そうだねえ。終わるまでお茶注いでるわ…。1時間でも1時間半でも、ここらでは最後まで飲んでるねえ。」しかし、何杯か飲んでもお茶の色が出続けるんですよねえ。お茶の葉は普通に売ってるのだよ、とおっしゃってたから、やはり信州のおいしいお水のなせる業かもしれません。

この「お茶」に漬物はつきものだそうです。「11月は、みんな漬物で一生懸命だで…」という長谷川のおばちゃん。「奈良漬はどこの家でも年じゅうある。」「野沢菜は春になるともう味が変わる。1番は1月だあねえ。」「大根はカタ大根は塩強めで5月6月までもたせる。早漬けは塩あまで秋に漬けて…。」などなど、お話の中から、野菜を上手く保存食にしていく信州の知恵がうかがえます。同行してくださった安曇野市職員さん曰く「野沢菜はよその家で食べるものだと思ってます。うちのより絶対よその野沢菜がおいしいんですよ」と。おばちゃんも「人のはおいしいねえ」と。どの漬物もすごく美味しかったんですが、驚いたのは“梅漬け”。カリカリ小梅だろうと思ってたら…、甘いんです、梅漬け。聞くと、氷砂糖で漬けるそうです。「自分は大人になるまで、梅漬け=梅干しだと思ってて“どうして酸っぱいって言ってるんだろう?”と疑問に思ってました」と安曇野市の方。おおお。食文化の不思議、ですね。そして、じもてぃな方々が披露してくれたのが、信州人の漬物の食べ方!鉛筆を持つように爪楊枝を持って、指と楊枝で漬物をはさんで口に運びます(下写真参照)。しかも煮物もこの方法で食べちゃいます。すごい~。

で、信州土産としても人気の野沢菜のお漬物ですが、おばちゃんから…「野沢菜は、ここで食べなきゃ。持ってくと味、変わる。空気にふれると、味、変わるんだろうね。おいしいの食べたきゃ信州に来なきゃあ。」との発言。おおお。名言だわ。3~4人であっという間にポットが空になっちゃう信州のお茶。これから、観光体験コースで各地で定番化してくださらないかなあ。そうそう、信州ではたくさんのメンバーでコタツを囲めるように「長座布団」なるものがありました。これで2人×4辺で8人いけちゃいますもん ね。日々の暮らしに違いがあって、やっぱり旅は面白い発見があります。映画「岳」を見て、FDAの直行便に乗って、ぜひ、信州でいっぱい面白いことを見つけてくださいね。
※ FDA →  http://www.fujidreamairlines.com/

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