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「一矢入魂」 伝統と革新の ”御矢師”

日本の伝統武道“弓道”。しかしその競技人口は減少、弓具職人の高齢化もあり伝統文化の継続が難しくなっている。この危機に対峙しているのが熊本県菊池郡にある「フェザークラフト」。弓道用の矢の生産で国内トップシェアを誇る、弓具製造卸販売会社だ。

祖先は熊本藩主のお抱え矢師という社長の高橋 平。娘婿の板倉寛樹と力を合わせ新たな弓具作りに取り組んでいる。 弓具に使われる素材はこの数十年で大きく変化してきた。中でも矢は竹などの素材から軽量のジェラルミンやカーボン製の物へ。金属の矢に羽根をしっかり接着させるために導入したのは宇宙ロケットの製造に使われている技術「プラズマ加工」だ。これにより金属の表面に羽根の接着が強固となり長時間水につけてもはがれることはなくなった。

また従来手書きで行っていた羽根の文様入れに高精度のプリンターを導入。猛禽類の羽根を再現するだけでなく、これまでにない和柄や着物柄など様々な種類の羽根を製造することに成功した。さらに弓道を広げるためにシャフトの色や羽根の柄、糸の色など顧客の細かいリクエストに応えるオーダーメイドシステムも導入した。 「日本中の弓具屋と共に弓道を守りたい」と語る“伝統の御矢師”の挑戦を追う。
■取材先
会社名:有限会社 フェザークラフト(屋号:平成弓具)
担当者:高橋 平代表・板倉寛樹
住所:熊本県菊池郡大津町杉水2969-5
電話:096-349-3741

取材後記

「名を秘して 伝統武道・弓道を守る」。
企業としてはいかがなものか…と問いたくなるのが、このフェザークラフトだ。
屋号の「平成弓具」はネット検索でヒットするが、フェザークラフトは全く表に出ることは ない。縁の下で全国の弓道店を支えている。

「影の存在だからこそ、きちんと仕事をこなす」が彼らの信条。矢の装飾で使うのは細い手縫い用の糸。これを均等に巻き付け、細かく裂いた金箔を全体のバランスを見ながら貼り付ける。最後はシャフトの曲がりを1本1本チェックし修正する。まさに匠、“職人集団”だ。
これに高橋代表の“ひらめき”が加わり、新たな機械が導入され、会社は進化し続ける。

板倉は各地の高校へ出向き、弓具の修理も請け負っている。練習日に赴くため土日もお構いなしだ。「きつい?感じたことないですねー。毎日が違うので楽しい」と楽しそうに笑う。
彼らの仕事ぶりを見ていると自分も“矢”が欲しくなる。彼らが丹精込めて作った矢を手元においておきたくなる。「老若男女問わず出来、90歳から始めた人もいるよ」との声に心はゆらぐ。
無限大に組み合わせることができる「匠の矢」で、自分好みの“オンリーワンの矢”を注文する日は近いかもしれない。

担当:RKK熊本放送 久保田泰代

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