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旨味ブゥワー!猪八戒!?は島の宝 ~沖縄在来 島豚を残す~

「鳴き声以外は全部食べる」というほど、豚との関わりが深い沖縄。その沖縄で今、絶滅寸前だった豚が復活しようとしている。
「島豚」と呼ばれる在来種だ。体全体を黒い毛で覆われ、腹は垂れ下がり、眉間にシワがよる怖い顔。「西遊記」の猪八戒そのものの顔つきだ。
この島豚は明治以降、西洋種の流入で雑種化が進み、ほとんどいなくなった。そこで今帰仁村の高田勝さん(57)は在来性を持つ豚どうしを交配させ、500頭を数えるまでに復活させたのだ。

この島豚、最大の特徴は脂の多さ。脂が溶ける温度が38.1度と低いため、口に入れたとたん、旨味がブゥワーと広がり、その後スーッと引いていく。
秘密は独自に開発したエサにある。精白米や米ぬか、泡盛の酒かすなど、20種類以上の原料の飼料を開発したのだ。

今、高田さんは島豚を売り出すコラボを推し進めようとしている。相手は赤身肉に価値をつけた「熟成肉」で年商7億円を叩き出す「格之進」。
社長の千葉祐士(ますお)さん(46)は、地元岩手の食材を使ったハンバーグで世界へ売り出すという。「肉のプロ」が下す島豚の味の評価は?地域に根ざした肉を売りたいという2人の想いに迫る。

取材先
会社名:農業生産法人 今帰仁アグー
担当者:高田勝
住所:国頭郡今帰仁村運天927
電話:0980-56-3543
その他:高田さんの島豚を食べられる店
「長堂屋おもろまち別邸」
那覇市おもろまち4-17-17
TEL 098-917-0206
「長堂屋」
今帰仁村玉城710-1
TEL 0980-56-4782

取材後記

「鳴き声以外はすべて食べる」と言われるほど、豚との関わりが深いウチナーンチュ。 豚肉は「アグー」と呼ばれ有名になったが、西洋種との交配の豚で、純血と言われる「アグー」はほとんどいない。高田さんは昔から飼われてきた島豚を離島で譲り受け、純血の在来種にこだわり数を増やしてきた。数頭から始まった飼育…そこには日本で 唯一の在来種の豚を残したいという、熱い想いがあった。

取材の最中、こんなことを聞いた。 「ジャガイモ飢饉の話はご存じですか?19世紀のアイルランドで、食糧のジャガイモが疫病で枯死したことで、約10年で150万人ほど亡くなったと言われています。 人間の頼る栽培品種が偏ったからですね。種の多様性があれば、そういった事態は防げる。種本来の性質を残す在来種を守ることには意味があるのです。」 高田さんが生産者であろうとするのはそのためなのだ。しかし、在来種の豚を残していくことは大変だ。美味しくなければ、消費者は見向きもしないからだ。

ヨーロッパにはフランス「キントア豚」やイタリア「イベリコ豚」、ハンガリーの国宝と呼ばれる「マンガリッツァ豚」と言ったような貴重な在来種の豚を守り、唯一無二の味にして世界中の養豚家からリスペクとされている生産者がいる。 高田さんのこだわりはそれらの生産者と比べてもまったくひけを取らない。きっと世界的に有名な在来種の豚と肩を並べる時が来るだろう。いや来るに違いない。 その時まで私たち消費者は美味しく頂いて、下支えしていこう。 なぜなら食べ手の存在によって、在来種の保存ができるから…。

担当:RBC琉球毎日放送 藤原廣進

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