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棄てられるものの輝き

熊本県水俣市の「浮浪雲工房」は、金刺潤平さん(57)が三十年前に始めた紙漉きの工房だ。こうぞなど伝統的な素材の他、バナナの木、たまねぎの皮、はき古したジーンズなども紙にしてきた。これら捨てられるもので作った紙は、どれも風合いよく魅力にあふれている。

2002年には、熊本の特産イグサを使った紙づくりに成功した。住環境の変化で畳表の需要が減り、余ったイグサが廃棄されている現状に試行錯誤を重ねた。イグサの壁紙は、吸湿性、脱臭性に優れ病院や学校などに使われている。金刺さんは、これまで、JICAなどのワークショップでインドネシア、ベトナム、マレーシアなどに渡り、紙漉きの講師として日本の工芸を伝えてきた。2006年には、中央アジアのウズベキスタンを訪問、サマルカンドペーパーの復元にも取り組んだ。最近は、日本のあちこちでその処理が課題となっている竹を使った製品作りにも取り組んでいる。

金刺さんによると、アートが「鑑賞」の対象であるヨーロッパなどと違い、日本は生活の中から工芸が生まれ、芸術が生まれる特異な国だという。かつては自然と共存するリサイクル社会だった日本。その知恵を生かしたものづくりで世界に発信を続ける。
取材先
会社名:水俣浮浪雲工房
担当者:金刺潤平
住所:水俣市袋42
電話:0966-63-4140
HP:http://haguregumo-kobo.com/

取材後記

金刺さんの和紙を通して見た日本のものづくりは、エコロジーと深く結びついていました。日本伝統のものづくりの心を、金刺さんは世界の人たちに発信しています。外国から工房を訪れる人たちは、金刺さんの思いをしっかりと受け止めているように感じました。金刺さんが、紙漉きの指導や紙の復元でこれまでに訪れた国は40カ国を超えています。大学卒業後、胎児性水俣病患者の支援のためにやってきて紙づくりを始めた金刺さん。公害に苦しんできた水俣だからこそ、生まれた物語です。夢を語っているときの金刺さんの表情の楽しそうなこと!金刺さんの活動は、今後も広がっていきそうです。

担当:RKK熊本放送 井上佳子

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