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技に歴史あり 薩摩錫器

鹿児島県指定の伝統工芸品「薩摩錫器」は300年以上の歴史を持つ。茶壷や花瓶、杯などがあり、縁起物としても知られている。錫はかつて、鹿児島でとれていた。国内有数の錫鉱山は薩摩藩が経営していたこともある。1988年に閉山するまで、錫は主に大砲や建築の材料として幕末の集成館事業に生かされた。

薩摩藩士・大久保利通は錫の茶壷を愛用していた。没後100年して発見された茶壷のなかからは、新鮮な茶葉が出てきたという逸話もある。錫でつくられた器は、気密性が高いのも特長のひとつだ。薩摩錫器は金属の錫を溶かし鋳型に流し込む作業や、数十分の1ミリの精度で削る作業などがあり、どれも熟練の技が必要。鹿児島県霧島市の岩切美巧堂は、薩摩錫器の数少ない工房のうちの1軒で創業100年の老舗。10人ほどの職人たちが伝統の技を守りながら、現代的な感覚で商品に新たな風を吹き込んでいる。

ベテランのなかに若手も加わり、錫の皿や箸置きなど、生活により密着した商品開発も進める。また、日本茶ブームを追い風に、錫の茶筒で世界への新たな挑戦も視野に入れる。伝統技で勝負する職人たちを追った。
■取材先
会社名:岩切美巧堂
担当者:岩切洋一(ひろかず)さん
住所:鹿児島県霧島市国分中央4丁目18-2
電話:0995-45-0177
HP:http://www.satsumasuzuki.co.jp/ その他:定休日12月31日~1月3日
約500点の作品を展示・販売
薩摩錫器工芸館を併設
製作体験コーナー有り(要事前予約)

取材後記


鹿児島県指定の伝統工芸品「薩摩錫器」は、300年以上の歴史を持つ薩摩藩ゆかりの錫細工。茶壷や花瓶、杯などがあり、「割れない」「錆びない」縁起物として知られている。しかし、製造工程や歴史などを知る人は少ない。
今回、岩切美巧堂には、企業秘密ぎりぎりのところまで取材に応じてもらった。鹿児島はかつて錫の産地で、工房は戦前、鹿児島市内に10数軒あったという。しかし戦時中、焼失したり、錫が軍事用に回されたりするなどし、現在、鹿児島県内に2軒だけになった。岩切美巧堂はそのうちの1軒で、薩摩錫器の需要の大半をつくっている。

国内ではいま錫製タンブラーが人気だが、海外向けには茶筒を売り込もうとしている。
職人の岩切洋一さん45歳が今回、新たにつくったのは「SATSUMA茶筒」。赤・緑・青、3色の小型の茶筒で、積み重ねもできるデザインだ。
日本茶ブームを追い風に、富裕層を中心に商機があると感じている。

岩切美巧堂は創業103年の老舗。使う人の生活に寄り添う商品をつくり続けてきた。代々受け継がれてきた伝統を守ることもだが、岩切さんは「現代的な感覚で新たな風を吹き込こむことも大事」と意気込む。冷たいビールを注いだ錫製タンブラーを手に、語り合ったあの日。岩切さんの夢は尽きない。
担当:MBC南日本放送 上村 隆一郎

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