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美の伝統と革新 薩摩切子

鹿児島を代表する伝統工芸品の一つ、薩摩切子。その歴史は江戸時代の終盤にさかのぼる。当時の薩摩藩主・島津斉彬の命で海外との交易品として作られた。合わせガラスをカットすることで表現する美しいグラデーションは、薩摩切子の特長のひとつ。しかし斉彬の死後、次第に衰退し、西南戦争で技術の継承は完全に途絶えてしまう。そんな薩摩切子を復活させようという機運が高まったのが、今から35年前。

復元プロジェクトが立ち上がり、数少ない資料をもとに研究を重ね、1985年、ついに120年ぶりに薩摩切子が復活する。そのプロジェクトで中心的な役割を果たしたのが、薩摩切子作家の中根櫻龜(おうき)さんだ。
関西出身の中根さんは招かれてプロジェクトに参加、薩摩切子の復活に成功した後も「最新の薩摩切子」を作り続けている。
現代の薩摩切子を特徴づける技術が「二色被せ(にしょくぎせ)」だ。

透明のガラスに2つの色を層にして重ねることで、色の“グラデーション”に加え、“変化”も表現することに成功した。こうした最新の技術が伝統の技術と融合することで、表現の幅を得た薩摩切子。伝統工芸品でありながら、今、最先端の芸術としても注目を集めている。
■取材先
会社名:薩摩ガラス工芸
担当者:中根櫻龜さん
住所:鹿児島市吉野町9688番地24
電話:099-247-2111
FAX:099-247-8441

取材後記

鹿児島が誇る伝統工芸品薩摩切子。今では県民はもちろん、全国各地にファンがいますが実は一度途絶えた歴史があります。復元プロジェクトの中心になったのが関西出身の中根櫻龜さん。当時神奈川県にあるガラス工芸の専門学校に通っており、推薦を受けて鹿児島へやってきました。

具体的な製造方法が記された当時の資料は残されておらず、数少ない写真や現物を頼りに試行錯誤したそうです。日本の伝統工芸品は、日本人向けに作られたものがほとんどですが、薩摩切子は海外へ輸出するためにつくられました。中根さんが大事にしているのは、ただキレイではなく、そこに日本の美意識や匠の技も感じられるような薩摩切子をつくること。すぐには買えないけどいつかは欲しい、日用品とは一線を画す工芸品であってほしいと言います。

今年復元35周年、さらに若い職人も多く、これからますます進化していく薩摩切子が今後も楽しみです。
担当:MBC南日本放送 江藤智恵

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