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東アジア情勢に詳しい、元RKB解説委員長で福岡女子大学副理事長の飯田和郎さんが、6月15日放送のRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演しました。今回は、習近平主席の73歳の誕生日を機に、最近の首脳外交で習氏の「右隣」に座り続ける側近・蔡奇(さいき)氏に注目し、習近平体制の現在と今後についてコメントしました。
一日違いで誕生日を迎えた2人の「大国リーダー」
6月14日はアメリカのトランプ大統領の80歳の誕生日でした。そして6月15日は、中国の習近平国家主席の73回目の誕生日です。大きな影響力を誇る2つの大国のリーダーであり、タイプが似ているとも言われる2人の誕生日がわずか一日違いというのも、何かの因縁を感じます。本日は、この「習近平氏の73歳という年齢」が意味を持ってくる話題をお届けします。
先週、習近平主席は7年ぶりに北朝鮮を訪問しました。8、9日の2日間の日程で、金正恩総書記との会談を通じ、中朝関係をさらに強固にしていくことを確認しました。初日である8日の夜に放送された国営中国中央テレビのニュースでは、30分間の枠のうち実に23分間を費やして、この北朝鮮訪問を映像で伝えていました。ピョンヤン空港に到着した習主席夫妻を金正恩夫妻がタラップの下で出迎えるシーンから始まり、沿道で動員されたピョンヤン市民が車列を歓迎するシーンへと続く、ある意味で圧巻の報道でした。
3つの首脳会談で常に「右隣」に座った男:蔡奇
この5~6月の習近平主席の首脳外交を振り返ってみましょう。
5月13日からアメリカのトランプ大統領が中国を訪問しました。その帰国から4日後に、今度はロシアのプーチン大統領が北京を訪れました。そして6月に入り、習主席が北朝鮮へ赴きました。米中、中ロ、中朝と立て続けに行われた首脳会談ですが、いずれの席でも習主席の「右隣」に座った人物に注目していただきたいのです。
その人物とは、中国共産党の最高指導部である政治局常務委員会のメンバー、蔡奇(さいき)氏です。政治局常務委員会は習主席をトップとする7人で構成されており、「チャイナ・セブン」とも呼ばれます。その中で、蔡奇氏は序列で5番目にあたります。
私は常々、「今の中国指導部にはナンバーワン(習近平氏)はいるが、ナンバーツー以下はいない」、つまり「習近平一強体制」であると申し上げてきました。公式な序列では5位であるはずの蔡奇氏ですが、一連の首脳会談の様子を見ていると、序列2位、3位、4位の3人を飛び越えて「習近平氏に次ぐ存在」「習近平氏が最も信頼を寄せる人物」であることが改めて証明された気がします。
「側近中の側近」蔡奇氏が担う特異な任務
蔡奇氏は現在、中国共産党の「中央弁公庁主任」を務めています。日本の企業や官庁の「主任」とは違い、中国における主任は組織のトップを意味します。中央弁公庁主任は、共産党総書記(習近平氏)の第一秘書の役割であり、日本の役職に当てはめるなら内閣官房長官や首席補佐官のようなポジションです。また、身辺警護の責任者でもあります。習主席に「寄り添う」「寄り従う」という重要な役割を担っているのです。
現在70歳の蔡奇氏は、習主席が福建省や浙江省など地方で勤務していた当時から仕えてきた関係です。習氏が最高指導者の地位に就いたのち、蔡奇氏も中央に引き上げられました。今の最高指導部には習氏の地方勤務時代の部下が目立ちますが、その中でも蔡奇氏は特別な存在と言えます。
首都・北京市のトップを務めていた時期は新型コロナウイルスの蔓延と重なり、徹底した「ゼロコロナ」政策で市民の大きな反発を招き「失策」との評価もありました。一方で、2022年冬の北京オリンピック・パラリンピックを総責任者として取り仕切った実績を積み、同年10月の共産党大会で最高指導部(チャイナ・セブン)に昇格しました。
新たな肩書「中央党校校長」の意味
そして今年6月、その蔡奇氏に新たな肩書が加わったことが明らかになりました。中国共産党の「中央党校」の校長です。
中央党校とは、北京市内にあり、中央や地方の様々なレベルの共産党高級幹部を養成する学校で、「中国共産党の最高学府」とも称されます。ひと言で表現すれば、「習近平体制への忠誠や指導理念を、幹部たちに叩き込む場所」です。
つまり、身辺警護も含めた秘書役としての中央弁公庁主任の肩書に加え、共産党幹部のための学校の校長として「思想の学習と思想統制」も蔡奇氏が取り仕切ることになったわけです。
実は、中央党校の歴代の校長ポストをたどると、習近平氏自身や、前任の最高指導者だった胡錦濤氏の名前もあります。そのような極めて重要な任務を蔡奇氏に託すということは、習近平氏がいかに彼を深く信頼しているかの証左と言えるでしょう。
後継者不在。見えてくる「4期目」と終身指導者への道
今日で73歳となった習近平氏ですが、気になるのは後継者問題です。来年秋には5年に一度の中国共産党大会が開かれます。
習氏は現在、共産党、国家、軍の3つのトップポストを務めています。かつての最高指導者たちが守ってきた「国家主席の任期は2期(合計10年)まで」という制限を自ら撤廃し、現在は異例の3期目に入っています。
今回、側近中の側近である蔡奇氏にさらに権限を集中させたことは、「このまま習氏への権力集中が続く」ということを意味します。もちろん、70歳の蔡奇氏が後継者になることは考えられず、あくまで側近です。
来年秋の共産党大会で続投となれば、習氏は4期目に向かいます。5月、6月と続いた一連の首脳外交での露出しぶりを見ても、その「4期目」がより現実化しているように映ります。現在の最高指導部(チャイナ・セブン)に後継者らしい人物はおらず、習近平氏自身が「後継者をつくっていない」と言っていいでしょう。
昨日80歳になったトランプ大統領は、仮に2029年1月に任期を満了したとしても82歳ですが、習近平氏はそれよりさらに長く最高指導者の座に居続けるのでしょうか。建国の父・毛沢東と並ぶ「終身指導者」になる道筋が、日増しに色濃くなっています。
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この記事を書いたひと

飯田和郎
1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。




















