鹿児島県南部に位置する南九州市川辺町。800年以上にわたり、この地域で受け継がれてきたのが国の伝統工芸品に指定されている「川辺仏壇」だ。しかし、昨今の仏壇離れによって、かつて日本一の生産台数を誇った産地は厳しい状況に直面している。
そんな危機に立ち上がったのが「河村金具製作所」の河村静江さん(64)。従業員4人の小さな工場で作っているのは、仏壇を装飾する小さな金属製の金具。銅や真ちゅうなどの金属板に、手打ちで繊細な紋様を施す。細やかさが求められる技術を70年以上にわたって磨き上げてきた。
そんな製作所で新たな挑戦が始まった。手打ちの技術を生かした小物やアクセサリーの製作、新ブランドの立ち上げだ。きっかけは静江さんの「愛犬との思い出の品を保存する小箱を、仏壇技術を生かして作りたい」という思いだ。小箱に始まり、次々と新製品を展開。鹿児島を訪れる外国人観光客からも「ハンドメイドとは思えない繊細な美しい紋様」と評判を集めている。
河村さんは「長年培われてきた職人技術を絶やさぬための挑戦」と笑顔で語る。伝統を未来へつなぐ、まち工場の熱き挑戦を追う。
<取材先データ>
河村金具製作所
代表者:河村 浩史さん
住 所:鹿児島県南九州市川辺町田部田6402番地
電 話:0993-56-2323
ホームページ:https://kawakana.com/
Instaglam:https://www.instagram.com/kawam_urametalworks/
取材後記
住宅事情の変化や後継者不足、安価な海外製品の流入など、全国各地で伝統工芸品の衰退が叫ばれる昨今。国指定の伝統工芸品「川辺仏壇」も決して例外ではありません。鹿児島県の川辺仏壇の魅力を知る一方で、業界を取り巻く厳しい実情も知ることとなった今回の取材でした。
川辺仏壇の繊細な技、そのルーツを知ったときは本当に驚きました。薩摩藩で一向宗の信仰が禁じられていた時代、洞窟(ガマ)の中にひっそりと隠れて念仏を唱える、いわゆる「隠れ念仏」が300年余り続いたと言われています。なるべく小さく、目立たぬように・・・そこから生まれたのが、一目では分からない、小さな仏壇でした。
弾圧から大切な信仰を守り抜くための工夫が、巡り巡って世界に誇る精巧な職人技へと磨かれていきました。歴史の深さと職人たちの執念に感銘を受けました。
そんな川辺の伝統を守ろうと奮闘しているのが、1945年創業、4人の従業員で切り盛りする「河村金具製作所」です。職人歴60年の川原眞也さんが作る「錺(かざり)金具」の技を生かし、企画や販売を手がける河村静江さんが旗振り役となって始まった新たな挑戦。自慢の金具が現代の暮らしに寄り添う新しいカタチに。そんな思いで作られた数々の商品は、海外観光客からも「オンリーワン!」「美しい」と絶賛を集めています。
静江さんが何度も口にしていた「やってみないと分からないじゃん」という言葉。厳しい実情と向き合いながら前へ進み続け、世界へ挑む小さなまち工場のストーリー。その夢の行く末を、これからも一人のファンとして見守り、応援し続けたいと思います。
(MBC南日本放送/杉本涼)
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