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岸田首相がしたのは「丁寧な説明」ではなく「丁寧な繰り返し」だ


安倍元首相の国葬儀について、「丁寧な説明をする」として閉会中審査に臨んだ岸田首相。しかし、「あれは『丁寧な説明』ではなく『丁寧に繰り返した』だけだ」と批判したのは、ジャーナリスト・鈴木哲夫さん。9月11日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Groooow Up』で以下のようにコメントした。
 

“点検”結果公表を国会説明の日にぶつける姑息さ

国葬をめぐる閉会中審査と旧統一教会との“点検”結果の公表。二つのことが同じ日にありましたよね。これは意図的なんですよ。例えばこの番組が政治のことを10分間扱うとします。岸田首相の閉会中審査だけがあったのであれば、それだけで10分間しっかりこの問題を取り上げられます。旧統一教会のことも同じ日にありましたよね。そうなると(扱えるのは)5分間ずつですよ。「もっと早く」とか「1日遅れて発表」なんて言っていたのに、同じ日に合わせてきた。

 

だから当日夕方のテレビニュースは、岸田首相が国会で何と説明したかを詳しく伝えるどころではなく、旧統一教会の記者会見一色でした。そういう意味ではしたたかなマスコミ対策なんでしょうけど、僕は実は逆で、この二つが一つになったことによって余計、岸田首相の指導力とか、物の考え方がマイナスに膨らんで見えてきたかなという気もします。

「丁寧な説明」ではなく「丁寧な繰り返し」

まず、国葬の方。岸田首相は「丁寧な説明」を、と言っていました。しかし私は「丁寧な説明」ではなく「丁寧な繰り返し」にしか見えませんでした。よく飽きずに、丁寧に何度も何度も同じことを繰り返しましたよね。本当に聞きたいのは「何で国会を開かないんだ」とか、あとは費用の問題ですね。これ間違いなく膨れますよ。私の取材では、政権幹部の1人が「30億円かかる」ってはっきり言ったんですから。

 

でも、岸田首相はまだいくらかかるか分からないと言っています。それから、僕が特に聞きたかったのは「弔問外交って言っていたのはどうだったのか?」ということ。結局G7の中で来る首脳って、カナダだけです。でも、そういうことは一切答えなかったですよね。だから、これはやっぱり何も答えていないに等しい。最後には「今後もさらに丁寧な説明を」なんて言っていましたが、今後も丁寧に丁寧に同じことを繰り返していくだけなんだろうなと思います。

 

今、国葬に反対している方が多い。でもあえて、国論二分という表現をしたとしても、国論が二分されたまま、国葬に入っていくという、環境としては極めて良くない形に、このまま進んで行く可能性が出てきました。

「弔問外交」は後付けか

弔問外交について外務省OBに取材したところ、(国葬が行われる)9月27日あたりって、国連総会が開かれているんですって。安倍元首相の国葬云々より前から、国連総会の日程は決まっています。国連総会は恒例として、一つの外交の舞台になっています。だから「なんでそんな時期に国葬を設定したんだろうか?」って、その外務省OBは話しています。

 

「国葬は外交のため」って理由づけをしていますが、実はあんまり外交のことは考えていなくて、後付けの理由なんじゃないかっていうのが、その外務省OBの言い方でしたね。つまり、弔問外交が必要だなんて最初から考えていたのではなくて、いろんな批判が出てくる中で、「いや、実は弔問外交の意味合いもあるんだよ」って後付けにした。本当に最初からその目的があるなら、その時期にはやらないっていうこと。

 

とにかく国葬をやる理由が全部曖昧だし、後付けが多いし、僕はそういう意味では極めてマイナスになったなと思います。

自己申告の“点検”では政治不信で政権の危機に

もう一つ、旧統一教会との関わりの“点検”。これは自己申告ですから、調査とは言えないでしょう。旧統一教会との関わりについては「立憲はどうだ」とか「維新はどうだ」とか言う人がいるんですが、自民党は与党ですからね。政権を支えている第一党でしょ。そこの矜持っていうかプライドというか、それをしっかり見せるためには、やっぱり適当な調査、自己申告じゃ駄目ですよね。

 

相変わらず「知らなかった」なんていう人が結構多い。何人かの名前が発表されましたが、その中には私もかなりディープに取材している人の名前もたくさんありました。だけど、知らなかったはずないですよ、みんな。旧統一教会だということがちゃんとわかって行っていたっていう人、この中に何人も知っていますから。

 

処分とか、これからどうするのかという話もあるし、それから何といっても旧統一教会問題について、法律的に何ができるのか。この辺はなかなか難しいとこもあると思うんですよね。解散命令を出せるのかとか、信教の自由もありますから。宗教団体としてではなく、トラブルを起こしている団体として考えられるのか。法整備と言っても「何か法律を一つ作りましょう」って話じゃないと思うんですよ。

 

でも、やっぱり皆さんがきっと思っただろうというのは「政治家って信用できるの?」っていう基本的なところなんですよね。選挙だから一票でもほしいっていうのは分からなくもないけど、それならなぜそれを素直に、正直に謝らないのか。だから「もう政治家なんか信用できないよ」っていう政治不信になってきていると思うんです。

 

自民党のあるご意見番的ベテランが言っていましたが「点検して発表したことによって、かえって火がついた」と。現に私のところにも今いろんな告発がきています。「あんなことを言っているけど、実はあの議員は…」なんていうのが。だからまだまだ続きますよ。

 

岸田首相は今、物価高対策で5万円の給付だとか、いろんなことをやっていますけど「上書き」ですよ。そうやってどんどん政策を打ち出しているけど、負のスパイラルに入って何をやっても批判されるんですね。あの5万円だって「一部の人だけの恩恵じゃないか」って批判が出ています。秋に向かって、政権はかなり深刻な状態になっていくと思いますね。

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