田畑竜介Grooooow Up

月~木曜 6:30
“超高齢社会のロックスター”新作カバーアルバムを松尾潔が絶賛

“超高齢社会のロックスター”新作カバーアルバムを松尾潔が絶賛

73歳のブルース・スプリングスティーンが、通算21作目となるアルバム「オンリー・ザ・ストロング・サヴァイヴ」をリリースした。音楽プロデューサー・松尾潔氏は「“音楽好きのおじいちゃん”が歌いたい歌を好きに歌っている。そこがいい。」と絶賛。RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で“イカした年寄り”ロックスターの新作の魅力を語った。

 

“イカした年寄り” ブルース・スプリングスティーン

ブルース・スプリングスティーンがカバーアルバム「オンリー・ザ・ストロング・サヴァイヴ」をリリースしたんですが、この出来が大変良くて、この番組でぜひ取り上げたいと思ったんです。

 

ブルース・スプリングスティーンはアメリカを代表するロックアーティストですが、もう73歳なんですね。スターと言われて久しいのですが、本当にかっこいい齢の重ね方をしています。本人もそれを自覚しているみたいで、自分のことを“イカした年寄り”とか言っているんです(笑)。

 

確かに、若いときよりも清潔感漂う、綺麗な70代なんですよね。若いときは労働者階級のヒーローっていう側面が強かったんですが、今は彼が大きな成功を収めてお金持ちであることを皆知っていますし、本人も隠すつもりもないみたいですし。

 

お嬢さんのジェシカさんは去年の東京オリンピックに馬術のアメリカ代表選手として出て、銀メダルを獲りました。どこで馬術の練習したのか? っていうと、これが自宅。今回のアルバムも、コロナの間にずっと自宅のスタジオで録っていたそうです。自宅でいろんなことが完結するんだろうなと思いながらアルバムを聴きました。

「音楽好きのおじいちゃんが好きに歌っている」

もともとブルース・スプリングスティーンはオリジナル曲でアメリカの市井の人々の声を代弁することで人気を博してきた人。そういう言葉の力が強い人なんですが、今回は若いときから影響を受けてきた、特にアメリカのブラックミュージックやソウルミュージックの中から「とにかく自分が歌いたい歌を、自分の歌声が一番かっこよく聞こえるような形で作品にしたかったんだ」ということを言っています。

 

普段の自作だと社会的なメッセージの色合いがずいぶん強かったりするんですが、今回は「音楽好きのおじいちゃんが好きに歌っている」って感じがします。それがいいし、本人も「俺の声っていいだろう」みたいなことを、今回いろんなインタビューで語っています。それも納得できる内容なんですね。

まるで「サザン、オフコースを歌う福山雅治」

では、どういう曲をカバーしているかというと、今R&Bという言葉で語ることが多い、アメリカの黒人大衆音楽が、まだソウルミュージックといわれていたような時代、すなわち彼が少年から若者だった頃に、個人的に耽溺したような曲。具体的に言うと、モータウンレコードの、デトロイトで生まれた音楽を好んで歌っています。

 

モータウンレコードの人気グループだったフォー・トップスの曲や、テンプテーションズなど。アメリカで生活して普段ラジオを聴いていたりすると、自分でレコードを買ったりしなくても、自然に耳に入ってきて覚えているような曲です。誤解を恐れずに言うと「サザンオールスターズやオフコースの曲を好きなように歌っている福山雅治さん」みたいな感じですね。そりゃ楽しいですよね、今回のアルバムは。

コモドアーズ「Nightshift」をカバー

中でも僕が気に入っているのが「Nightshift」。これはモータウンのグループで、ライオネル・リッチーさんがいたことで有名なコモドアーズの曲です。ライオネル・リッチーさんが脱退して、看板スターを欠いてしまったわけですが、残ったメンバーで大ヒットを飛ばした1曲です。

 

「Nightshift」は1985年にヒットした曲ですが、その前年にジャッキー・ウィルソンというシンガーが亡くなったんですね。あと同じくモータウンのスターで、マーヴィン・ゲイもそのちょっと前に亡くなっていて、この「Nightshift」1番の歌い出しは「マーヴィン」、2番の歌い出しは「ジャッキー」。若くしてこの世を去った音楽仲間についての気持ちや、去りゆく時代、良き時代への郷愁みたいなところを歌った曲でした。

超高齢社会のロックスター

その「Nightshift」を40年近く経ってブルース・スプリングスティーンが歌ったわけですが、80年代に遡ると、当時ブルース・スプリングスティーンがモータウンの曲をカバーすることなんてまず考えられなかったわけですよね。

 

これはロックアーティストも例外なく、超高齢社会の中に入ってきたということかもしれません。若いときにはジャンルが違った人たちが、ある程度の年齢になると混在するみたいなことは、普段の生活でも皆さん経験あると思うんですよね。

 

例えばテレビドラマを見ても、新劇出身、歌舞伎出身、アイドル出身の俳優が、それぞれ実力派俳優として一緒に演技をしていることはよくあると思うんです。このアルバムを聴いていると「ブルース・スプリングスティーンがこんな曲をカバーするぐらいの年齢になっちゃったんだ」ということから、齢を重ねるということの厚みや面白み、そして今のこの時代を考えるきっかけになるんじゃないかと思います。

火曜ドラマ『君の花になる』

SHARE
  • Twitter
  • Facebook
  • LINE

過去の放送内容

番組SNS

  • Radiko
  • Twitter
  • Instagram
番組
SNS
  • Radiko
  • Twitter
  • Instagram