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薄くて、しなやか!常識破りのコンクリート

「厚い」、「重い」、「固い」。そんなイメージを覆す全く新しいコンクリート「ハイブリッドプレストレストコンクリート(通称:HPC)」が沖縄で生まれた。
従来の鉄筋等を用いたコンクリートだと台風等による塩害の影響でコンクリート内の鋼材が錆びてしまい、耐久性低下の原因となっていた。また、錆びを防ぐためにある程度の厚み(かぶり)が必要で、その厚さゆえ、取扱いが難しく、デザイン性に乏しいこともコンクリートの持つ課題の一つだった。

そんな中登場したHPCは、鉄筋等の代わりに“炭素繊維”を採用。従来の鉄筋等に比べて軽く、錆びる心配もない薄いコンクリートが実現した。また、膨張材や細かい繊維を混ぜることにより簡単に崩れることもなく、高い耐久性や強度を備える一方、加工しやすく、人力で運ぶこともできる。

2015年に国内で特許を取得。米国等5つの国と地域でも特許の審査段階に入っている。近年老朽化が懸念されている世界遺産、長崎県・軍艦島の保全工法の候補にも挙がるなど、気象状況の変化や震災の影響も相まって各地でニーズが高まっている。地場産業でしか成り立たないと言われてきたコンクリート。今、沖縄発!最新コンクリートが世界の常識を変える!
■取材先
会社名:株式会社HPC沖縄
担当者:阿波根 昌樹さん(あはごん まさき)
住所:〒901-2224 沖縄県南城市大里字古堅1246番地
電話:098-897-3211
HP:http://hybridpc-okinawa.com/

取材後記

海岸にずっしりと佇む波消しブロック、ブーゲンビリアとのコントラストが美しい花ブロック。沖縄で生まれ育った私にとってコンクリートは、風景に馴染み過ぎているもので、それについて深く考えることはこれまでなかった。逆に、伝統的な日本家屋に漂う杉や檜の香りを嗅ぐたびに、その“上品さ”と“温かさ”をうらやむことが多かったかもしれない。

しかし、今回の取材を通して沖縄に根付くコンクリート文化を誇らしく思うことができた。約70年前、先の大戦で壊滅的な被害を受け、木造住宅や山林が消失し、木材が手に入れにくくなった沖縄。その後のアメリカ統治下時代、米軍基地内で建てられたコンクリート住宅が徐々に基地外にも広がっていったことや台風によってもたらされる被害も住宅のコンクリート化を加速させた。そんな背景があったのだ。それから時が経ち「デザインの幅を広げたい」、「地場産業の枠を超えて海外でも展開したい」、そんな阿波根さんらの情熱によって開発されたHPC。2015年に特許を取得したばかりの技術で実例がまだ少なく、コストをいかに抑えられるかという課題もあるが、各地で需要が高まっている。

阿波根さんらも「より実用性を高めていくために色んなオファーを受けて実験を続けていきたい」と更なる飛躍に向けて意気込んでいる。HPCは、コンクリートの良さを保ちつつ、これまでの“無骨さ”や“冷たさ“を解消し、沖縄のみならず、世界の新たなコンクリート文化を創造してくれることだろう。
担当:RBC琉球放送 與那嶺啓

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