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秋元康の初期作品は「男の心もようを代弁」音楽プロデューサーが解説

ラジオ
春の褒章で作詞家の秋元康さんが紫綬褒章を受章した。アイドルへの楽曲提供のイメージが強い秋元さんだが、音楽プロデューサー・松尾潔さんは「男の心もようを代弁するような」歌詞の印象が強いという。秋元さんの64歳の誕生日にRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演した松尾さんが、初期の秋元作品を題材に、その異能ぶりを解説する。  

「若いときの方が大人っぽい歌詞を書いていた」

田畑竜介アナウンサー(以下、田畑):きょうは秋元康さんの64歳のお誕生日なんですね。

 

松尾潔さん(以下、松尾):僕よりちょうど10歳年上の方で、僕が中学、高校生ぐらいのときから第一線で仕事されています。ちょうど僕が中学生の時、姉が当時好きだった稲垣潤一さんのアルバムをよく聴いていたんですが、1982年リリースで今でも有名な「ドラマティック・レイン」も秋元康さん作詞です。1982年っていうと、マイケル・ジャクソンの「スリラー」が出た年ですよ。その頃からヒット曲を出して、いまだにずっと第一線でいらっしゃるんだと思うと、ゾッとします。「上がつっかえすぎだよ」って、僕なんか思っちゃうんだけど(笑)

 

田畑:特に今はAKB48をはじめ、乃木坂46など、アイドルへの楽曲提供というイメージがありますけど、キャリアのスタートの頃は、いろいろなアーティストに提供されていたんですね。

 

松尾:彼の作品は、一連の女性アイドルに提供したもののイメージが強いだろうし、あとは美空ひばりさんの「川の流れのように」を作詞したことぐらいは皆さんご存知だと思いますが、僕から見た“秋元さんの初期設定”というのは、そのどちらでもなくて、男の心もようを代弁するような歌詞を書いていた方。若いときの方が、大人っぽい歌詞を書いていたっていう印象があるんですよね。先ほどの稲垣潤一さんのほかにも、長渕剛さんの「GOOD-BYE青春」とかも。

 

田畑:これはテレビドラマ『家族ゲーム』でよく聴いていました。長渕剛さんって自分で全部詞を書いているのかと思っていましたけど、この曲の詞は秋元康さんだったんですね。

 

松尾:一見、秋元さんと結びつかないようなアーティストにも昔はよく提供していて、矢沢永吉さんの「アリよさらば」もそうですね。

 

辻満里奈アナウンサー:私のイメージと正反対です。「アイドルのかわいい曲」ばかりではないんですね。

高度なテクニックで大人を揶揄している秋元作品

松尾:あともう一つ、紹介したいのが伊武雅刀さんの「子供達を責めないで」。これ、日本でも洋酒のCMに出て人気があったエンターテイナー、サミー・デイヴィスJr.がアメリカでヒットさせた曲の日本語版ということで作られました。元の曲は「子供たちを責めるな。子供たちは大人の写し絵なんだ」っていう内容だったんですが、そこをちょっとひとひねり、ふたひねりした日本語詞になっています。

 

田畑:すごくインパクトある歌詞ですよね。

 

松尾:子供の非行が社会問題になったアメリカの1960年代から70年代のプロテストソングだったのを、日本ではコミックソングにしちゃって「子供達を責めないで」っていうタイトルなんだけど、子供を責めまくる内容で。「私は子供に生まれなくてよかった」っていう最高のフレーズが入っていますけど、結局は“子供をコケにする愚かな大人”という、この国の大人を揶揄する内容を、すごく高度なテクニックで秋元さんは歌にしていたんですね。

 

松尾:歌というのか語りというのか、これは作詞家というよりも、放送作家っぽいっていう彼の出自を思わせる作りでもあるし、固い言葉で言うと、何か既存の価値や思い込みを紊乱(かき回す)するというか。疑問を提示して、聴く人をザワっとさせるっていうか。「セーラー服を脱がさないで」もパッと見“なんていう反社会的な曲だ”と思うけど、そういうことを面白がっている大人をまたさらに揶揄するっていうような。一筋縄でいかないんですよ、秋元さんが作っているものって。

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