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“盗撮”の現場に遭遇「その時どう行動すればよかったのか?」

終電をホームで待っていると、隣に並んでいる女性がスカートの中を盗撮されている――その状況を目撃したあなたは、どんな行動をとるだろうか?RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』のコメンテーター、神戸金史RKB解説委員は先日、そんな衝撃的な瞬間に居合わせたという。その場で神戸解説委員はどんな行動を取ったのかを再現しながら、どう行動するべきだったのかを考えた。  

女性の後ろでしゃがみ込んだ男の手にスマホが

神戸金史RKB解説委員(以下、神戸):地下鉄の中洲川端駅で終電を待っていた時に、盗撮する男を目撃してしまうという実体験が、おとといありました。隣に立っていた女性の後ろから、男がスマートフォンを差し出していたんです。女性は20代前半くらいの感じで、自分のスマートフォンを触っていました。日曜日の終電なので、ホームにはちらほら人がいるぐらい。あまりに頭に来たので、夜中にフェイスブックに書いてみたんです。

フェイスブックの投稿(1)

「……何しよんか、貴様」

「……こら、そんカメラは何か?!」

中洲川端駅のホーム、終電を待って僕の隣に立っていた女性の後ろから、すっと床にスマホを置いたのは、若い男性だった。
武田伊央アナウンサー(以下、武田):床に置くんですか?

 

神戸:しゃがみこんで、手に持ってはいましたけど床にほとんど置いて、股の下に差し込んでいたんです。20代から30歳前後の若い男性だった。女性は全く気づいてないです。

フェイスブックの投稿(2)

「おいこら、スカートん中撮りよるんか、こら! おい! 盗撮やぞ!」

ここまで、大声で5秒。

どちらかと言えば、おしゃれな感じの男。

スマホを持ちあげ、全力で中洲口の方に走っていった。

最大限の声量で、背中に浴びせかけた。

「そん走りよる奴、盗撮やぞ! こらー、貴様! 盗撮野郎!」

 

股の下に置いたスマホは、ライトが点いていた。初めて見た。

教訓。まず、スマホを蹴り飛ばすべきだった。

次は、絶対仕留めてやる。
田畑竜介アナウンサー(以下、田畑):よく公衆の面前で、そこまで大胆な行動に……。

 

武田:もし気付いても、こんな大声を女性はあげられないと思うんですよね。まず「怖い」と思ってその場を立ち去って、もう近づかないようにする……。

 

田畑:神戸さんみたいに、周りで言ってくれると。

 

神戸:終電が来ちゃったので、乗ったんです。女性は「ありがとうございました」とは言っていましたけど、口数が少なかった。かなり動揺していたんじゃないかな。「大きな声出しちゃってごめんね」って言いました。お礼を言って、彼女は降りていきました。私も駅で降りてから、中洲川端駅に電話したんですが、留守電でした。それで、翌朝改めて電話をして「その時間に、全速力で走っている男が(防犯カメラに)映っていたら盗撮犯です」と伝えました。博多警察署にも電話しました。

盗撮目撃!どう行動すればよかったのか?

神戸:さて、僕はどう行動すればよかったのか。昨日、福岡市地下鉄と、福岡県警鉄道警察隊、性犯罪の対策にあたっている県警生活安全総務課などに聞いてみたんです。地下鉄によると、全速力で走っている男がはっきり映っていた。「中洲川端駅に知らせていただければ」と言われたんだけど、「電話がつながらなかったんです」と話しました。終電が出ると、駅の電話は留守電になるんだそうです。すると「降りた駅で、駅員に一言言ってもらえたら」。改札を出てしまったんですけど、駅員さんはいますから。「中洲川端駅に連絡してくださいと言えばよかったんだ。なるほどー」と。これ、反省点ですね。

 

神戸: 110番した方がよかったのかなとは思ったんですけど、男が全速力で逃げちゃったのと、終電が来て乗っちゃったので「すぐに110番しよう」と思わなかったんです。警察は、「それでもいいから、すぐ110番してほしかった」とおっしゃっていました。鉄道警察隊が去年アンケート調査をしていて、痴漢の被害に遭った人で警察に届け出た人が7.1%しかいなかった。動揺しているし「大騒ぎにしたくない」とか「どうしていいかわからない」というのも大きいかもしれませんね。その後「誰かに相談しましたか」という問いには42.7%が「相談していない」と答えたそうです。これでは卑劣な犯罪をする人たちが減らないと思うので「110番はぜひするべきなんだ」と思いました。 神戸:地下鉄に「走っている男の写真で『こういう男がいたら注意!』みたいなチラシやビラができないもんですか?」と言ったんですけど、「それは出せませんね」と。私から聞いたっていうのは、「伝聞」ですよね。被害者が言っているわけじゃないし、仕方ないかなと思いました。「被害者の女性に連絡先を聞くべきか」も悩みました。でも明らかに動揺していて言葉数は少ないし、途中の駅で降りちゃったんですよね。後で思えば、名刺を渡して「もし警察に言いたいんだったら、証言するから連絡して」と言ったらよかったのかなとも思ったんです。

 

田畑:それだと、向こうに選択肢を委ねられますよね。

 

神戸:ところが、この話を妻にしたら「そんな手の込んだことをする痴漢もいるかもしれない」と。

 

田畑:チームと思われると?

 

神戸:「なるほどなー」と思いました。酔っ払いの人を介抱するふりをする泥棒もいるじゃないですか。善意を装って近づく人もいるかもしれない。嫌な世の中ですね。警察から言われたのは「女性から110番してもらえたら、一番いいです」と。動揺しているかもしれないけど「110番しましょう」と一声かけたらよかった。被害者の方にそういう意思があるかどうかが大前提ですけど。私が電話して「いま隣にいらっしゃるのでちょっと代わります」と。私に名前や連絡先を言うのに抵抗があるのであれば、警察に言ってもらって。そうしたら、その後の動きができたかもしれません。

 

神戸:警察は「110番を受ければ、すぐに警官を配備しますから」と言っています。映像もあるでしょうから、確認して警戒に当たることができたかもしれない。捕まるかどうかは別ですが、警察が調べているとはっきりわかれば、抑止効果になるかもしれない。

 

神戸:僕が「絶対に、今度は床に置いたスマホを蹴り飛ばしてやります!」と言ったら、「それはやめてください」と言われたんです。私が危害を受けるのを気にされていらっしゃるんだろうと思いますけども、現行犯の場合は「常人逮捕」「私人逮捕」もあるんですよね。目の前で行われた犯罪について、通報していたら逃げちゃう時に、民間人がその場で犯人の行動を制限して捕まえておいて、警察に引き渡す。でも、勝てるかどうかわからないので、スマホを蹴り飛ばすのが一番早いかな。それから大声を上げよう、と今は考えていますが、警察や地下鉄から「それはちょっとお勧めできません」と言われました。

 

田畑:感情が高ぶっているときに、冷静な判断は難しい。ましてや当事者の方が「110番しなきゃ」という心理状況になかなかなれないでしょうから、第三者の冷静な目で「こういう時は110番した方がいいですよ」と言ってあげる。今教えてもらった対処方法を知っておくってことも大事ですね。

 

神戸:できなかったことも含めて、お伝えしておいた方がいいと思いました。痴漢・盗撮被害をなくさないと。僕も男性ですから、許しがたいと思っています。

盗撮・痴漢を見つけたら――


・駅員に伝える。

すぐに無理なら、降りた駅で。

 

・即座に110番する。

被害者の情報は、本人から伝えてもらう
 

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