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“浮かない泡”がエビを育てる!

熊本県立大学の堤裕昭教授(58)は、10年以上前からマイクロバブルを利用した養殖の研究を続けている。

マイクロバブルは50ミクロン以下の小さな泡。通常、水中で発生させた泡は、すぐに水上に浮上する。しかし、マイクロバブルは、水中に浮遊する特徴を持つ“浮かない泡”。この特徴によって、泡の中の空気に含まれる酸素を水に溶かすことができる。

養殖場は、過密飼育・富栄養化・汚泥などの要因で水中は酸欠状態になっている。特に光合成が行われない夜は顕著だ。マイクロバブル養殖は、水中に効率よく酸素を溶解させることで、生物の成長を促進させるだけでなく、養殖場の汚泥のバクテリア分解も促進する。環境負荷を少なくして、生産性の高い養殖漁業を実現する可能性を秘めている。

研究は、実用化へ向けての最終段階。今年からタイでエビ養殖の生産性を上げる実験を始めた。世界の養殖業を変える!その夢を追い続ける堤教授の取り組みを追う。
<マイクロバブル発生装置eco-バブルの問い合わせ>
大巧技研 西 哲雄
電話:096-323-1518
(問い合わせは、装置に関するものが考えられますので、主人公の堤教授ではなく、装置の販売元・大巧技研にしています)

取材後記

「230バーツ!」エビの単価を日本語で話す女性が番組に登場します。彼女が誰なのか、番組では説明していません。実は彼女はタイの大学で教鞭をとる研究者です。今回の堤教授の実験は、2つの養殖池の酸素濃度の変化を毎日2回測定し、何百尾というエビのサンプルをとって成長の変化を統計処理するなど、かなり大掛かりなものでした。その作業を担っていたのが、タイの大学の研究者と研究所の技師です。そして、エビ収穫の当日は、4人の研究者が堤教授をサポートしていました。日本の研究者の実験のために、なぜこれだけのバックアップ体制がとられていたのか…。「タイは世界有数のエビ生産国です。しかし、環境的な課題も多い。マイクロバブルは、タイの養殖業を大きく変えることができるかもしれません」研究者も堤教授の研究に大きな関心を寄せていました。

番組を時間内に収めるために、泣く泣くカットしたシーンがあります。せめてこの場で紹介させてください。タイでの取材中、堤教授にアメリカからメールが届きました。堤教授も驚いていましたが、アメリカの水処理会社からのメールで、水処理システムに組み込めないかという相談でした。そして、台湾の養殖関係者からも、生産性を上げたいという相談のメールが届いていました。堤教授の取り組みは、世界中から少しずつ注目を集め始めているようです。

もうひとつ、番組では紹介できなかったことを書きます。番組ではマイクロバブルの「酸素を水に溶かす」特徴を紹介しましたが、マイクロバブルは二酸化炭素、オゾン、水素などさまざまな気体を水に溶かすことも可能です。二酸化炭素を溶かしたお風呂には、血行促進の効果があります。オゾンを溶かした水には、殺菌効果があります。ほかにもマイクバブルで洗濯に使う水を減らすことも可能だそうです。マイクロバブルは、さまざまな産業に応用できる可能性を秘めています。

近い将来、マイクロバブルは、もっと世の中に広まっているかもしれない…。そんな可能性を、ひしひしと感じる取材でした。

担当 RKK 熊本放送 薛 力夫

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