笑顔よ届け！時空を超えるフローズンケーキ

福岡県糸島市に本社を置く五洋食品は、冷凍ケーキを専門に製造・販売している。主に業務用が中心だが、ホテルやカフェ、レストラン、宅配など、私たちも何気なく口にしていることがあるはずだ。約250種類以上の商品を開発し、業績は右肩上がり。

中でもベイクドチーズケーキはモンドセレクションで金賞を受賞した人気商品である。一般的にケーキが冷凍であることはマイナスのイメージだが、保存期間が長く且つ衛生的、時空を超えてケーキと共に笑顔まで運べると、舛田圭良社長は胸を張る。でき立てを食べるフレッシュケーキではなく冷凍庫に常備するケーキ、時間を気にせずいつでも食べたいときに食べられるケーキ、それが五洋のこだわりである。

解凍後をゴールに定めた独自のレシピ作り。有名シェフやおしゃれなイタリア料理店とも積極的にコラボし、シェフや顧客の舌にかなう味を作り出す。そこでしか食べられない味だからこそ、忠実に再現されストックできる冷凍技術に、魅力と需要があるのだ。そしてもう1つのこだわりが、徹底した品質管理。実は五洋食品には“食品回収事故”という苦い経験があったのだ…。一時はたった3人になってしまったと言う従業員。これを戒めとした徹底的な衛生管理の見直し。そして経営破綻の危機を乗り越えたのは、何よりケーキに情熱を注ぐマンパワーの力だった。今、時を超えるケーキは糸島から全国へ、さらに海外へ！ストックするケーキという新しい食文化を伝えるため、日々奮闘する五洋軍団を追う。

冷凍ケーキは案外身近なものである。カフェやレストランなど、何気なく食べているケーキが実はそうかもしれない。普通に食べて普通に満足しているのに、冷凍です、と聞いたら、やはりがっかりするだろうか。しかしそれは「冷凍」に対する培われてきた概念、思い込みに過ぎないのかもしれない。番組中、いわゆる洋菓子店で使う生クリームのケーキと、冷凍用のクリームを使ったケーキを２つとも凍らせて解凍し、どう変化するか比較実験をしている。

撤収時、3時間以上経っても変わらぬ味と形の冷凍ケーキは、スタッフ間で飛ぶように売れた。「これどこのケーキ？」と聞かれ、冷凍だと答えると、まず皆驚く。そのリアクションにしめしめと思ったものだ。フレッシュと呼ばれるケーキはまず冷凍はしない。作ったときが食べる時だ。同じように冷凍ケーキは解凍したときが1番おいしくなるよう考えて作ってある。食べるときの状態は一緒でも、冷凍ケーキとフレッシュのケーキは別物なのだ。まずそこをご理解いただきたい。個人店が丹精こめてケーキを焼くのと同じように、工場では、並々ならぬ努力のもとケーキが作られている。焼き上げた後、急速冷凍をかけることで菌の付着する隙を与えず、衛生的、かつ余計な添加物も保存料も使っていない。この五洋食品という会社にまず興味を持ったのは、普通なら蓋をしてしまいたくなる「食品回収事故」という過去を隠そうとしないこと、そしてさらにそこを教訓として安全安心に邁進していることにあった。冷凍ケーキに特化したことも、決意と意気込みが伝わってくる。

舛田社長の語り口は淡々としているが、ここまで来るには言葉で尽くせぬ苦労を察する。営業のことも経営のこともわからないまま事業を引き継ぎ、さらに借金まみれの状態で新工場を設立、そして咋年債務超過を解消している。攻める姿勢と、それを支える従業員のマンパワーにあっぱれだ。糸島の、そう大きくない企業が冷凍ケーキだけで勝負し、大手ひしめく業界で全国でも4番手に付け奮闘しているのだ。しかも小回りを利かせて海外にまで進出している。冷凍という最大限の特性を生かせば、家庭用にストックしたり、アウトドア用に持ち歩いて保冷剤とデザートの一石二鳥の役割も果たせる。残念なのは手に入れる術があまりに少なく、願わくば小売展開をして欲しいことだ。