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タネト~種でつながる物語~

皆さんは野菜の種を意識したことがあるだろうか?日本で流通している野菜のほとんどはF1種と呼ばれる一代限りの野菜。これに対してその土地に根付き種を採りながら何代にも渡って育てる野菜を「固定種」と呼ぶ。

この固定種野菜とその農法を守り継ごうという取り組みが、長崎県雲仙市で行われている。拠点となっているのはオーガニック直売所「タネト」。その運営者・奥津爾さん(45)は、去年12月から「たねの学校」という講座を開催している。講師は、種採り農家として40年以上在来種の野菜の種を守り継いでいる岩崎政利さん(70)だ。岩崎さんの農法と哲学を学ぼうと、全国各地から農家や食に関心がある人たちが集まった。

岩崎さんは種を採る作業を「種をあやす」と呼ぶ。まるで子どもをあやすかのように。種を採り野菜を育てることは、命を循環させること。その自然の循環の中に人は生きている。参加者たちは「たねの学校」の中でそのことを肌で感じていく。

日本古来の野菜は、農家が種を守り継ぎ、それを流通させ消費者に食べてもらわなければ、いつか途絶えてしまう。「タネト」や「たねの学校」を通して、生産者と消費者、流通というそれぞれの立場の人たちがつながり、種を守り継ぐための取り組みが広がっている。
■取材先
会社名:オーガニック直売所「タネト」
代表:奥津爾(おくつ・ちかし)さん
住所:雲仙市千々石町丙2138-1
電話:0957-37―2238
HP:https://www.organic-base.com/ その他:水曜休
平日10時~16時 土日祝10時~18時
ランチ11時半~(15時L.O) https://www.instagram.com/taneto_unzen/

取材後記

「タネト」がオープンしたのは1年前の11月中旬。東京でおしゃれなカフェを経営していたご夫婦が、わざわざ雲仙市に移住してきて直売所を開くということで、情報番組で生中継をさせていただいたのが取材のきっかけでした。

何を隠そう、タネトがある千々石町は私の父の故郷でもあり、馴染み深い町に活気が生まれればという思いもあり、取材を始めました。奥津さんご夫婦が慕っている種採り農家の岩崎政利さんは、この業界ではレジェンド的な存在の方で、NBCでも10年ほど前に番組を制作したことがあります。その頃は、周囲に理解者はほとんどいない状態で独りで作業をされていたそうです。しかし、奥津さんや地元の若手農家が岩崎さんの技術を学ぼうと集まり始め、まず「雲仙たねをあやす会」を結成。これが、今回番組で紹介した「雲仙たねの学校」に繋がりました。

「たねの学校」の受講者たちは、農家をはじめとして、料理人、麺職人、パン職人、主婦、八百屋さんなど様々。職業は全く食や農に関係が無くても、かつて体調を崩した経験から食について深く考えるようになった、という人もいました。その1人1人が岩崎さんから学び、種を撒くように全国に散らばり、それぞれの居場所でまたその技術や考え方を活かして行かれると思います。

岩崎さんは種を採る作業のことを、まるで子どもを扱うように「種をあやす」と呼びます。野菜は命。食べ物について考えることは、命について考えること。私自身、それを学んだ取材でした。
担当:NBC長崎放送 城代 奈美

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