野菜なのか、果物なのか――。長崎県島原市で育つ、緑のベールに包まれた謎の食材。その正体は「青パパイヤ」だ。栄養豊富で“健康野菜”とも呼ばれる一方、日本ではまだ食卓へのなじみが薄い。
そんな青パパイヤを、全国の定番野菜にしたいと挑む坂本公生さん(70)は、もともと精密機械部品の工場を経営していた。ベトナムで出会った青パパイヤのおいしさと可能性に魅せられ、5年前から栽培をスタート。機械づくりで培った技術を生かして加工場を整備し、冷凍カット野菜の商品化や新メニューの開発にも乗り出している。地元のホテルでは、食感を活かしたすき焼きや、新たな料理づくりも進行中だ。
さらに挑戦の舞台は県外へ。青パパイヤの栄養を生かしたグルテンフリーの米粉麺の開発を進め、健康とおいしさを兼ね備えた新たな食品づくりにも挑む。その原動力は、ベトナムとの縁を未来へつなぎたいという思いだった。
異国で出会った一つの食材が、島原から新たな食文化を生み出そうとしている。青パパイヤを日本の当たり前の野菜へ――。夢を追い続ける坂本さんの挑戦に迫った。
<取材先データ>
株式会社 コウセイプランニング
長崎県島原市有明町大三東戊3009番地
代表者 坂本公生代表取締役
https://koseiplanning.com/
株式会社 公精プラント
長崎県島原市有明町大三東戊2757番地
代表者 坂本充宣代表取締役
https://www.koseiplant.com/company
有限会社 雲仙福田屋
長崎県雲仙市小浜町雲仙380-2
代表者 福田努代表取締役
https://www.fukudaya.co.jp/
株式会社 ヤマナミ麺芸社
大分県大分市日吉町4番3号
代表者 吉岩拓弥代表取締役
https://yamanami39.com/
取材後記
2026年1月、当時のプロデューサーから「島原のお土産」と手渡されたのは、一袋のパパイヤ茶。パパイヤと聞けば南国の果物というイメージしかなく、「本当に島原で育つのだろうか」と半信半疑だった。ところが実際に農園を訪れると、ビニールハウス一面に青パパイヤが実っているではないか。しかも、その先には普賢岳がそびえている。島原にいながら異国に迷い込んだような、不思議な感覚を今でも覚えている。
取材を重ねる中で強く感じたのは、坂本さんの人を巻き込む力だ。旅館では新たな料理が生まれ、製麺会社では米粉麺の開発が進む。4月下旬、苗の植え付けの取材で農園を訪れた際には、農業移住してきた若者たちが作業を手伝っていた。「若者がいるとにぎやかでいい」。そう話す坂本さんの周りには、自然と人が集まり、笑顔が生まれていた。
取材中、「島原発で世界に通用する青パパイヤをつくりたい」という言葉を何度も耳にした。壮大な目標だが、不思議と大げさには聞こえない。それは坂本さんが夢を語るだけでなく、自ら加工場をつくり、新たな商品を生み出し、展示会に出展し、ときにはヒントを求めて海外へ足を運ぶなど、販路を広げるための努力を重ねている姿を見てきたからだ。
私自身も青パパイヤを試食したが、癖がなく、どんな料理にもなじむ食材だと感じた。「もっと気軽に手に取れるようになればいい」。それが一人の消費者として抱いた率直な感想である。
坂本さんの挑戦は、青パパイヤを育てることでは終わらない。その思いは気づけば多くの人を巻き込み、新たな輪を広げていた。島原から始まったこの挑戦が、日本へ、そして世界へと広がっていく日を楽しみにしている。
(NBC長崎放送/松岡有紀)
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