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原発事故で避難生活を送る人の思い出と音楽綴るドキュメンタリー映画

あなたは「自分の人生にとって大切な、思い出の一曲」ってありますか? 東日本大震災と福島第一原発事故で避難生活を送る人たちの声と音楽を集めたドキュメンタリー映画の上映会が福岡市で開かれる。RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演したクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんが、この映画について解説した。

ちょっと変わった被災地支援活動

きょうはドキュメンタリー映画『ラジオ下神白—あのとき あのまちの音楽から いまここへ』という作品を紹介します。7月15日に福岡市内でこの映画の1日限定の上映会と対話イベントが開催されます。

あなたは「自分の人生にとって大切な、思い出の一曲」ってありますか? その曲が忘れられなくなったきっかけや、その曲を聴いていた当時の風景といったものには、ひとりひとり、誰とも似ていない、個人的な思い出とその理由があると思います。この映画は、そうしたひとりひとりの記憶と関わってくるような映画です。

映画の舞台は、福島県いわき市にある「下神白(しもかじろ)団地」という復興公営住宅です。この団地には、2011年の東日本大震災、そして福島第一原子力発電所の事故によって、浪江町・双葉町・大熊町・富岡町から避難してきた方たちが暮らしています。

この復興団地に2016年、アーティストや文筆家として活躍しているアサダワタルさんが入って「ラジオ下神白」という、“ちょっと変わった被災地支援活動”を始めました。

アサダさん、実は2011年の震災直後から2年ほど、岩手県大槌町に支援活動のために通っていたそうですが「当時何も力になれなかった」という思いをその後ずっと抱いていました。

しかし、知人からの誘いを受けて、改めて被災地を訪れる機会を得たことをきっかけに、そこに暮らす人たちの復興支援活動として何ができるか、というのを模索することを始めます。

「ラジオ下神白」は、団地で暮らす住民に、震災前に暮らしていた街でのさまざまな思い出や、なじみ深い曲について話を聞き、ラジオ番組風に編集して、CDを作って各家庭に届ける活動から始まりました。

「あなたの思い出を聞かせてください」と訪問して話をしていると、ふと当時聞いていた歌を口ずさむ住人がいました。そこで、実際にその曲を流してみると、またそれがきっかけで、いろんな思い出を話し始めるという場面があったようです。

ちあきなおみの「喝采」、加山雄三の「君といつまでも」、里見浩太朗の「ああ人生に涙あり」、そして美空ひばりの「愛燦々」といった歌と、それにまつわる個人的なエピソードが語られていきます。

そうして一人一人の話と音楽をラジオ風にまとめたCDを各世帯に配布する、という活動を続けた後、今度は思い出の曲を、アサダさん率いるバンドが生演奏して、それに合わせて歌ってもらう「歌声喫茶」を始めたり、その演奏のようすをミュージックビデオにしたりと、音楽を通じた被災地支援活動を重ねてきました。

この活動を撮影し映画化したのは、映像作家の小森はるかさん。小森さん自身も、震災直後から東北に移り住んで、東北の風景と人の営みを記録し続け、これまでに映画『息の跡』『二重のまち/交代地のうたを編む』として発表してきました。

7月15日、福岡市早良区の西南学院大学西南コミュニティセンターホールで『ラジオ下神白』が上映され、アサダワタルさんと小森はるか監督も登壇予定です。

また、同日午後6時からは、会場を福岡市中央区の唐人町商店街にある小劇場に移して、アサダワタルさんと小森はるか監督との対話イベントも予定しています。

こちらは「ラジオ下神白」の一連の活動を通して集めた住民の語りと歌を収録したCDアルバム「福島ソングスケイプ」を参加みんなで一緒に聴いて、アサダさん、小森さんと話す会になっています。

7月15日(土)『ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ』 福岡上映会のお知らせ

◉映画『ラジオ下神白』福岡上映会
日時:2023年7月15日(土)13時30分開場 14時開始 17時頃終了予定
会場:西南学院大学内 西南コミュニティーセンター・ホール
料金:一般1500円、学生1000円※事前予約不要、当日券のみ
ゲスト:小森はるか(映像作家)&アサダワタル(文化活動家)
主催:西南学院大学「ことばの力養成講座」

◉対話イベント
CDアルバム「福島ソングスケイプ」をともに聴き、アサダワタル&小森はるかと話す会
In「唐人町プラザ甘棠館」カルチャーホール
日時:7月15日(日)18時00開場 18時半開始 20時半終了
会場:「唐人町プラザ甘棠館」カルチャーホール
ゲスト: アサダワタル、小森はるか
参加費:500円(現地、現金払い)
定員:25名
主催:里山社

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