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「妻・夫」「亭主・女房」「ワイフ」…パートナーを何と呼ぶ?

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6月3日放送のRKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』で、RKB毎日放送の神戸金史解説委員長が、家庭におけるパートナーの呼び方について多角的に考察しました。フラットな関係を築く上で推奨される呼び方から、ジェンダーの観点から問題視される呼び方まで、様々な選択肢が議論の対象となりました。

 

呼び方をたくさん書き出してみた

神戸金史RKB解説委員長(以下、神戸):パートナーを何と呼ぶか。「相方さん」のことですね。「連れ合い」と言ってもいいですけど。

田畑竜介アナウンサー(以下、田畑):確かに、いろいろな言い方がありますよね。

神戸:呼び方を思いつく限り、紙に書き出してみました。大きく見ると、ふたつのグループに分かれそうです。ひとつめのグループは「フラットな関係性を示す呼び方」です。ファーストネームで「竜介さん」と呼ぶ。もっと親しみがあれば敬語なしで「竜介」とファーストネームだけ。あるいはニックネーム。ほかに、「連れ合い」「相方」「パートナー」。「ワイフ」という言い方をする人も、いるかもしれません。それから「妻」とか「彼女」、逆に「夫」とか「彼」「彼氏」などもこの範疇に含まれます。

神戸:もうひとつは、ジェンダー上、問題のある言い方です。性的な役割分担を前提にしたグループですね。「お父さん・お母さん」「母ちゃん・父ちゃん」。それから極端な言葉で言うと、「うちの母ちゃん」「うちの父ちゃん」を省略した、「うちの」。それから「家内」「奥さん」「奥様」「嫁」「嫁さん」「かみさん」「女房」「亭主」「主人」「旦那さま」。性的な役割が前提にあってできた言葉です。

橋本由紀アナウンサー(以下、橋本):はぁぁ…。

神戸:今どき、「旦那様」という謙虚な言い方があるとは思わないんですが、「うちの旦那がね、……」とかね。

田畑:「私の大事な旦那さま」なんて歌もありましたけど、もう「今は昔」ですね。

神戸:パートナーを「旦那さま」と呼ぶ感覚は、わかる?

橋本:あまり、わからない……あまり聞いたこともないです。

神戸:「旦那がさあ」という会話、よく女性の間であるよね。

橋本:そうですね……。でも「夫」の方が最近は増えてるのかな、と。

神戸:「ジェンダー的に問題のないもの」として「妻」や「夫」があると思うんです。「亭主」はちょっと昭和の匂いがします。

橋本:あんまり聞かないですね。

神戸:「うちの女房がさ、……」とか聞かない?

橋本:ニョーボ…?

神戸:平成生まれにはない、ってことか。

橋本:結婚している同級生が少ないので、そもそもこういう話題が……。

芸人がよく使う「嫁」「旦那」

神戸:芸人さんがよく「うちの嫁がね」「旦那、どうなのさ?」とか言うよね。

橋本:あー、聞きますね。

神戸:僕はあんまり、いい感じがしないんですよね。「嫁」はもともと息子の妻のことも言うよね。関西の芸人さんたちの言葉がどんどんテレビを通じて広まっているような感じもしなくはないです。どちらにしても僕は、「旦那」とか「嫁」はどうかなあ……と思うんですけれども、「どういう場面で使うか」でも全然違います。極めてフォーマルな場所で、「うちの旦那がですねー」とは言わないですよね。こういう時になると「主人」になっちゃったりするんです。

神戸:でも「主人」は、ジェンダー上問題のある言葉の一つです。フォーマルで言いやすいのは、名前です。お葬式で、「夫の竜介が大変お世話になりました」「竜介は生前、このように申しておりました」。一方でもう一つ、名字があります。男性が亡くなった時、妻の喪主あいさつで「田畑が生前……」という言い方。

田畑:ありますね、確かに。

神戸:これ、逆はないんですよ。男性が妻に先立たれた時に「橋本が本当にお世話になりました」とは言わないんです。男性のみ名字で呼ぶのが成り立つのは、ジェンダー上問題がある言葉だということです。でも、ファーストネームだと大丈夫。個人と個人の関係で呼ぶのに支持が広がっていると思うんだけども、実はフォーマルなところではジェンダー上問題のある方が使いやすかったりする。この辺り、ちょっと気にした方がいいと思うのです。

時代とともに変化する言葉

神戸:僕は妻のことを「〇〇さん」と名前で呼んでいます。

田畑:僕も名前、でも呼び捨てですね。お互い、呼び捨てで。

橋本:私は呼び捨てでもいいですけど、「お前」が嫌です。「あなた」とかはいいんですけど。私、「お前センサー」があるんです。センサーがピピピッて鳴りますね。パートナーと関係なく、きょうだいにふざけて言われた時に「もう1回言ってみ?」と言って、「言えないよね? 私は『お前』は嫌だよ」と伝えます。

神戸:言葉って、変わりますよね。「お前」、江戸時代ではそんなに悪い言葉じゃないですよね。

田畑:「御前」ですからね。

神戸:「貴様」もそうですよね。「尊いあなた様」という意味で使っていたのが、だんだんぞんざいな風になって。

田畑:九州じゃもう今「きさん」ですからね。「きさん、こらぁ!」

神戸:ははは、「きっさーん、こるるぁぁぁ!」と巻き舌でね。言い方は時代で変わるんですけど、そういう意味で言うと「亭主」「旦那」「女房」「かみさん」なんていう言葉はそろそろ役割を終えてもいいのかもな、と。でも、フォーマルなところでは「主人」「奥様」「家内」がまだまだ使いやすい。

田畑:相手に対して、自分のパートナーを引き立てるわけにもいかないから、謙譲する意味で「家内」という言い方を使うこともありますよね。

神戸:僕はこの近年、意図的に「連れ合い」という言葉を使ってきたんです。「連れ合いがね……」とか、「あなたのお連れ合いは……」。結構いい言葉だと思っていたんですけど、この番組のディレクター(28歳)は、「連れ合い」という言葉を聞いたことがなくて、僕が言っているのを聞いて「辞書で調べた」と言っていました。

田畑:なるほど、やっぱり令和では通用しなくなってくる面も。

神戸:連れ合いも厳しいのか……では何がいいのか

橋本:最近は、「妻」と「夫」が広がりつつあるという実感はありますね。

神戸:それが一番プレーンな言い方ですよね。フォーマルで使ってもいいし、日常的にも「うちの夫がね」という会話はおかしくない。でも相手のことを言う時はあんまり使わないですね。「お宅の夫さあ、……」ってちょっと言いにくい。

田畑:あくまで「うちの夫」「うちの妻」と言う場合ですね。

神戸:あなたのところとなると「お宅の旦那さあ」と言ってしまうかもしれなくて。

田畑:「あなたのパートナーは、……」って、広がっているのかなあ?

橋本:聞く機会は増えてますね。

神戸:自分が「うちのパートナーがね」という形でいうことは、まだちょっと少ないと思うんですね。いずれこなれるのかもしれないですけどね。全然駄目だなと思ったのは、「配偶者」です。「配偶者でいいんじゃないか」と言っているフェミニストがいたのですが、「おたくの配偶者は」「うちの配偶者が」……ちょっと無理だな、と。今、一番僕が「いいな」と思っているのは、「連れ合い」から変わったんです。「うちの彼女」。

田畑:「うちの彼女」!?

神戸:妻のことを誰かに言う時に「うちの彼女はね……」っていう言い方はどうだろう、と思っているんです。

田畑:へえ!

神戸:こう言ったら、「それ、ない」と否定されることがけっこう多いんだけど、僕はありかなと思っているのですよ。でも、「うちの彼氏」と妻が言ってくれるか? 絶対言わないです。

田畑・橋本:ははは!

神戸:僕は「〇〇さん」と名前で呼んでいますけど、「うちの彼女」からは「お父さん」と言われています。よく、「お母さん」と呼ぶと「あなたのお母さんじゃありませんからね」というやりとりがありますが、同じよう「子供のお父さん」という家庭内の役割だからジェンダーの問題があるんです。「あら? 子供を介してでしかない関係になっている?」と思うと、なかなか微妙な。

田畑:距離感みたいなものも反映されるんですかね。

神戸:1対1、対等で呼び合う方が、僕はいいと思うんです。彼女が僕を「お父さん」と呼ぶのを否定はしませんけどね。家庭でこんな会話をしてみたら、面白くありませんか?

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この記事を書いたひと

神戸金史

報道局解説委員長

1967年、群馬県生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。現在、報道局で解説委員長。