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異常な夏を迎えた中国…洪水と干ばつが頻発する気象の転換点とは?

飯田和郎

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東アジア情勢に詳しい、元RKB解説委員長で福岡女子大学副理事長の飯田和郎さんが、7月6日放送のRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演し、台湾や中国など東アジアの異常気象の現状と、各国の防災への向き合い方についてコメントしました。

自分たちに影響がない台風の「その先」

だれもがこんなことを思わないでしょうか。たとえば、自分の住む町を通過する可能性のある台風が発生したとします。台風の進路予想図が気になり、そして、その進路が我が町から外れた場合、どう感じるでしょうか。たとえば現在、台風9号が西太平洋を西へ進んでおり、10日以降に沖縄県に近づく可能性がありますが、その先どう進むかが焦点になっています。

進路が日本列島を外れたとすると、私たちはホッとします。しかし、その台風の行き先、つまり直撃を受けた国や地域では、台風の勢力が弱まらない限り大きな被害が出る場合があります。自分たちに影響がないと安堵して、関心が一気に薄れてしまうわけですが、周辺で被害が出たケースを最近の例から見てみましょう。

6月末に発生した台風7号は記憶に新しいと思います。27日夜までに日本の東の海上で温帯低気圧になり消滅し、日本への直接的な影響はありませんでした。沖縄本島の西側を北上して奄美群島をかすめ、一時九州南部でも警戒が必要でしたが、最終的に九州・四国沖を通っていきました。

ところが、台湾では事情が異なりました。台風7号は上陸しなかったものの、沖縄周辺に接近・通過した影響で南西の方向から湿った空気が吹き込みました。台湾各地では24日から豪雨に見舞われ、その豪雨で4人が死亡する被害が出たのです。

「洪水と干ばつ」が同時に起きる異常な夏

次に、中国の状況を見てみましょう。私たちが警戒する台風が、西へ大きくカーブして中国大陸を襲うケースも少なくありません。7月を迎えたことで、中国大陸も本格的な大雨警戒の時期に入りました。

ただ、この夏の気象の特徴を、中国の気象当局は「干ばつと洪水を併せ持つ、極端な現象が頻発する」という見解を示しています。広い国土を持つ中国とはいえ、洪水と干ばつという相反する事態が起きる可能性があるというのです。

まず、大雨についてです。太平洋の赤道域の東部で海面水温が高くなるエルニーニョ現象の影響もあり、中国では今年、平年を上回る降雨が見込まれています。主要な河川の流域で大規模な洪水が発生するおそれがあります。

中国の政府機関の一つに、自然災害や人災を問わず即座に対応する「応急管理省」という部門があります。この応急管理省が、大雨のシーズンを前にした6月末に記者会見を開き、中国における今年の特徴的な気象ポイントとして、これまでにない異常気象を予測しました。

「中国北部地域においてもこの夏、平年を上回る雨量があり、洪水の危険性が高まると予測されています。一方、降水帯が北へ移動するにつれ、南部の一部地域では干ばつに転じる可能性があります」

雨が多いとされる南部も、場所によっては干ばつになり、洪水対策とその反対の干ばつ対策を同時にやらなければならないという状況です。

「南湿北乾」の常識が崩れる気象の転換点

応急管理省は、「2026年、雨が降るパターンはこれまでと違い、中国の気象の大きな転換点になります」とも分析しています。

中国の中央気象台の予測によると、「降水分布の逆転」が今年の特徴だそうです。中国には長年「南湿北乾(南部は雨が多く、北部は乾燥する、日照りになる)」という言葉がありましたが、この長年続いてきた気象傾向とはまったく違う状況になっています。

しかも、今年は中国北部では大雨の時期が早くなり、5月からすでに大雨が降り始めているようです。応急管理省によると、大気の循環に大きな変化があり、亜熱帯高気圧がこれまでより高い緯度の上空に陣取っています。その結果、ベンガル湾、南シナ海、西太平洋からの暖かく湿った空気が、これまでとは違ってより高い緯度の上空に流れ込みやすくなっているのです。

一方で南下した寒気と、異常に北上した暖かく湿った気流がぶつかり、北部に大雨災害をもたらす可能性が高まっています。いわば、中国版のゲリラ豪雨と言ってよいかもしれません。これまでの常識はもはや当てはまりません。

中国北部ではこれまで、「洪水への備えは広い範囲で行っても、実際に対応するケースはまれ(=大きな洪水被害が起きることは少ない)」というのが共通認識でした。しかし今日では、「大雨や洪水は頻繁に起き、規模も大きい」ということが新たな常識になろうとしています。予測では、中国北部の豪雨の発生頻度や雨量は、1990年代の平均と比べて5割も増加するとされています。

災害対策は「政権維持」にも直結する

統計によると、中国国内で今年1~5月の5か月間に起きた自然災害(主に洪水や地震など)によって、合わせて111人が死亡・行方不明になりました。そして、5月の1か月間だけで、直接的な経済損失は日本円で約4000億円に達しています。これからさらに警戒を要する季節に入ります。

従来のパターンを覆す異常気象が数多く発生し、国民の暮らしや経済に打撃を与えれば、中国の指導部も強力な対策に乗り出さなければなりません。

6月30日には、極めてハイレベルの指導者が集まる中国共産党の政治局会議が開催されました。トップの習近平主席も出席し会議を主宰しましたが、この会議の中心テーマがまさに「防災」でした。異常気象を前に、会議では次のような決定が下されました。

「各地域および関係部門は警戒を強め、最悪の事態を想定して備える姿勢を徹底しなければならない。大規模な洪水、深刻な干ばつ、強烈な台風への対応を整えるとともに、何よりも人々の生命の安全に努めなくてはならない」

自然災害は庶民の暮らしを脅かし、損ないます。その防災を怠ると、人々の怒りや不満が政権に向かうケースもあります。中国の災害対策は、国民を守ることであると同時に、指導者自らを守ることにもつながっているのです。

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この記事を書いたひと

飯田和郎

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。2025年4月から福岡女子大学副理事長を務める。