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地魚を未来へ~2秒の水産イノベーション~

鹿児島大学准教授・江幡恵吾さん(53)。2025年1月に水産テックスタートアップ「株式会社ZIFISH」を創業した彼が挑むのは、崩壊の危機に瀕する日本の水産業だ。

 

現在、業界は深刻な資源減少という「経験外の事態」と、漁協職員の不足や高齢化に伴う「アナログな労働環境の限界」という二重苦に直面している。約500種もの地魚に恵まれる鹿児島でも深刻だ。

 

この構造的課題に対し、江幡さんが打ち出した解答が「スマート計量とデータ化」による現場改革。魚を秤に載せるだけでカメラと連動し、わずか2秒で正確な重量データを自動送信。計測後の紙伝票処理や手入力といった煩雑な事務作業を一気に削減し、日々の事務時間を3時間から1時間に激減させた。出荷・管理などの工程を劇的にスムーズにすることで鮮度を保ったまま迅速に流通させ、消費者の食卓へより新鮮な地魚を届ける。


かつてタイの漁村で泥臭く向き合った原体験と漁協との絆から生まれたこの仕組みを、同じ課題を抱える東南アジアなど世界へ広げようとしている。

 

「海はつながっている」と語る、100年先の食卓へ地魚をつなぐ起業家准教授の挑戦を追う。

<取材先データ> 

鹿児島大学水産学部
 所在地: 〒890-0056 鹿児島県鹿児島市下荒田4丁目50-20 水産学部1号館
 電話番号: 099-286-4111

取材後記

物流や運送、介護や医療、建設など様々な分野で人手不足や高齢化が課題となっている。私たちの生活に直結する一次産業も、例外ではない。

 

そんな中、「課題を解決するかもしれない」と思ったのが、スマート計量システム「ZIFISH」だ。取材前は「デジタル化で漁協の業務を効率化する」という話だと思っていた。しかし本当の狙いは、水揚げされた魚を鮮度が高いうちに早く出荷し、私たちの食卓へ新鮮な地魚を届けることにある。

 

何より印象的だったのは、開発者の江幡先生自身が大の魚好きだということ。早朝の船上で「ウルメイワシ」を手に笑顔を向ける姿に、このシステムの真価を見た気がした。

 

さらに興味深いのは、AIカメラの開発だ。一瞬で魚種を見分ける技術の実用化が進めば、選別や記録の手間はさらに激減する。リアルタイムの海水温計測とあわせ、先進技術が現場の負担を着実に軽減している。

 

テクノロジーは業務を効率化するためだけではない。開発者の情熱と現場の想いが結びついたとき、それは人々の暮らしや食卓の豊かさまで守る大きな力になる。「2秒の水産イノベーション」が手繰り寄せた、そういう未来なのかもしれない。
 

(MBC南日本放送/七枝大典)

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