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モルタルに息吹を吹き込む“造形屋”

砂とセメント、水を混ぜて作る「モルタル」。主に建築資材として使われるこのモルタルを自在に操るのが熊本県玉名市の髙森大輔さん(38歳)だ。自らを「造形屋」と呼ぶ。造形とはオブジェや立体看板などを作る事。20代で上京、板金会社に勤める傍ら造形や加工塗装のアルバイトをみつけ技術を磨いた。8年前、故郷へ戻りフリーランスに。これまで世界的なテーマパークの造形物や東京駅のクラシックなドーム型天井、八代港の巨大くまモンオブジェなどを作ってきた。その作風を知る人からは店舗の内装などの依頼も舞い込む。髙森さんが得意とするのは「エイジング塗装」。いったん完成した造形の表面を削ったり、別の色を塗り込んだりすることであえて「年季が入った雰囲気を醸し出す」という技法だ。今年1月から関わっているのは「写真スタジオの内装」。“子どもがワクワクするアイデアを”という依頼主の要望で、1部屋の中で全く異なる空間が楽しめるよう、レンガ作りの壁や石の扉、擬木などの趣向を変えた造形を使うことに決めた。依頼に応えるべく、納得するまで塗る、削る、塗るを繰り返す…。
造形屋の仕事ぶり、作品に込める思いを描く。
会社:D-project
担当者:髙森大輔
住所:熊本県玉名市岱明町野口2188
HP:http://aw-dpro.com Instagram:@dproject1129

取材後記

少ないオフの日も工房でモルタル造形。「趣味で作っている」という高森さん。「モノ作り好き」は遺伝かもしれない。髙森さんの祖父が趣味にしていたという日曜大工の腕前は、近所に住む本職の大工さんが助っ人として頼みにくるほどだったそうだ。工房で仕事をする髙森さんの様子を楽しそうに眺めていたという、祖父。遺品の1つである脚立は髙森さん現場の相棒だ。髙森さんにはたくさんの「弟子」がいる。というのも彼の現場ではその施主さん家族も一緒になってモルタル造形を行うことが多いからだ。髙森さんと一緒にモルタルを塗って、削って、塗装して。初めての体験に大人も子どもも夢中になるという。今回取材した外壁工事を依頼した施主さんも「今度は家族全員で塗装する」と楽しみにしていた。
材料となるコンクリートや砂は1袋約25キロ。それを何袋も準備して運ぶ。足場が悪い中での作業も少なくない。作品の華やかさとは裏腹に実際は過酷な面もある仕事だが、髙森さんを見ていると“心底楽しんでいる”としか感じない。現場は和気あいあい。笑いが絶えないのだ。「驚いて欲しい、喜んで欲しい」。この思いが彼の腕を動かしている。
モルタル造形を広げるためにワークショップを検討中。作りたいものはまだまだたくさん。今後、どんな作品が生み出されるのか。見た人々の反応は。楽しみでならない。

(RKK熊本放送 久保田泰代)

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