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限りなく“活”

イカの醍醐味は食感。イカは刺身でコリコリと。そんな水揚げされたばかりのような食感が、冷凍イカでも味わえるようになっている。イカ漁が盛んな長崎県対馬市。この島で“長崎活魚ネットライン”を経営する山口哲昭さん(69)は、画期的な冷凍技術を完成させた。

イカが生きている状態で墨袋を抜き取り、“特殊精製水”を注入したパックにイカを詰めた後、急速凍結させる技法だ。イカ体内の氷の結晶が成長するのを抑制することで旨み成分が逃げない。また、保存中の冷凍焼けや乾燥も防止できる。解凍後も活魚と変わらない食感と味を維持できるという仕組みだ。

今は九州各県や関東にも大きな取引先が出来、受注量も順調に伸びている。流水解凍すると透明なイカに戻り、吸盤が指に吸い付くような感覚さえあるというのだから、評判になるのもうなずける。

消費市場から遠いという流通上のハンデがある対馬。そこで山口さんは、冷凍技術を応用して島の魚介類を島の外にアピールしようとしている。マグロやアナゴなどを限りなく活魚に近い状態で送り出せれば、地元の活性化にもつながる。島内の加工業者に指導を行い、技術の普及活動を始めている山口さんを追う。
<取材先データ>
「長崎活魚ネットライン」
住所:長崎県対馬市峰町佐賀533
電話:0920-82-0330「ホクスイ」
住所:長崎県対馬市上対馬町古里13-3
電話:0920-86-4910

「桐谷商店」
住所:長崎県対馬市厳原町小茂田717-8
電話:0920-56-7131

取材後記

対馬での取材の際、どこの現場でも聞こえてきたのが「素晴らしい漁業資源はあっても、輸送の間に質が落ちてしまう」という趣旨の言葉。離島ならではの悩みを改めて思い知りました。冷凍法の工夫でそれを乗り越えられるのであれば漁業者、加工業者、そして消費者にとってもうれしい話です。

今回、アナゴの刺身を生れて初めて食べたのですが、こんなに美味しいものだとは思いもしませんでした。フグの身に、かなりの旨味をプラスしたような味と食感。捌きたてでないと美味しくないというアナゴの刺身が、どこでも食べられるようになったら素晴らしいことです。NBCの取材スタッフの一人も、“お取り寄せ”を真剣に検討していました。

イカやアナゴなど、限りなく“活”に近い冷凍ものが本当に町おこしに繋がってくれるのではないかと、今後の動きがとても楽しみです。

担当 NBC 長崎放送 岩崎 健太郎

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