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大空間を作る!束ねて重ねた木材のパワー

日本の木材自給率は1955年(昭和30)の96.1%から2015年には33.2%にまで減少。 林野庁は、低迷を続ける国産材の自給率を2025年までに50%に回復させる目標を掲げている。

その起爆剤として期待されている製品を熊本県山鹿市鹿北町にある木材加工業「工芸社・ハヤタ」の社長、早田允英さん(77)が開発した。

杉の製材をエポキシ樹脂という接着剤で圧着し『束ねる(Binding)』・『重ねる(Piling)』という手順を経て作る木質複合軸材料「杉BP材」だ。 杉による重ね材としては日本で初めて国土交通大臣認定を取得している。
さらに、部材にあけた孔に鋼棒を挿入し、接着剤を充填して硬化させることにより木材同士を接合する「TKS構法(鉄筋拘束接合構法)」も開発(2012年)。 「BP材」を「TKS構法」で組み立てることで、それまでの鉄筋コンクリート造、鉄骨造に匹敵するような大空間・大架構の木質構造建築(体育館やアリーナなどの建物)が可能になった。

今年3月には生産拠点を日本全国に広めるため「日本BP材協会」を設立。さらに、上質な桧を使った「桧BP材」も開発し、東南アジアへの輸出も視野に入れている。 日本の林業を救うべく、木材新技術の開発に挑戦する技術者の姿を追う。
取材先
会社名:株式会社 工芸社・ハヤタ
担当者:中村勝博 専務取締役
住所:熊本県山鹿市鹿北町芋生3952-2
電話:0968-32-3158
HP:http://www.hayata.co.jp//

取材後記

今回は、建築物ではなく、使われている木材の取材であった。
建築物であれば意匠性のインパクトなどで興味を持たせられるのだが、そこに使われている素材となると、「必要性」や「開発された背景」も説明しないと見ている人に伝わらないのではと考えた。

工芸社・ハヤタが開発した「BP材」は、小さな断面の角材を「束ねて」「重ねて」貼り合わせることで大きい断面の木材に加工した製品だ。「BP材」の開発により、それまで鉄筋コンクリートや鉄骨造が主であった小学校の校舎や体育館などの大型建築物を木造にすることが可能となった。

学校にとっては安全に使用することが出来れば、鉄筋コンクリート造でも木造でもどちらでも良いのではと想像する。
ではなぜ、小学校の校舎や体育館を木造にすることが必要なのか。

そこには、日本の木材自給率の低下が関係するのだ。今や日本の林業は衰退し、森林は放置され、中山間地は過疎化が進んでいる。荒廃した森林は土砂災害を起こしやすくなり、二酸化炭素を吸収する働きも低下するため地球温暖化にも影響を及ぼす。日本の林業の再生は不可欠な状況なのだ。
そこで開発されたのが「BP材」。国産材復活の起爆剤として期待されている。
私たちの生活は、さまざまなものが繋がっているのだと改めて感じた取材であった。

担当:RKK熊本放送 平松幸徳(AREA)

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