PageTopButton

夢の技術で食文化を守れ!“鰻師”の挑戦

絶滅の危機にあるウナギ。打開策として注目されるのが、人の手でウナギに卵を生ませ育てる「完全養殖」。しかし、完全養殖のウナギは大量生産に成功した例がない。そこに2つの壁が立ちはだかっているからだ。
1つ目の壁は、人工ふ化してから5センチほどの稚魚に育てるまでの生存率が極端に低いこと。もう1つは、生き残った稚魚を出荷サイズまで育てるのが難しいことだ。

全国一の養殖ウナギの産地・鹿児島でこの壁を突破しようと動き出したのが、養殖業者・山田水産の加藤尚武さん49歳だ。長年養殖に携わり、「鰻師(うなぎし)」と呼ばれるほどウナギのことを知り尽くす加藤さん。国の研究機関が育てた人工稚魚を提供してもらい、出荷できるサイズまで問題なく育てられるか調べる実験を、去年から始めた。水質や水温などの環境変化に弱い人工稚魚。加藤さんはこれまでの経験と勘を生かしながら実験に取り組み、その結果、天然の稚魚とほぼ同じ9割近い生存率を達成し、養殖に必要なノウハウもつかめるようになってきた。 

「不可能」とも言われてきた完全養殖によるウナギの大量生産の夢に、一歩近づいた加藤さん。日本の食文化を守ろうと奮闘する姿を追った。
■取材先
会社名:山田水産株式会社
担当者:加藤尚武 養鰻部長
住所:鹿児島県志布志市有明町野井倉3518-4
電話:099-474-2770
HP:http://yamadasuisan.com/

取材後記

私が加藤さんと出会ったのは今年4月のこと。国の研究機関とともに、完全養殖ウナギの大量生産を実現するための実験をしていた最中でした。“鰻師”の異名を持つ加藤さん。ウナギを見つめる姿は、まるでわが子を見守っているようでした。
絶滅の危機にある、ニホンウナギ。貴重な資源をどう守り、いかしていくのか。鰻師・加藤さんとともに、国の研究機関、そして鹿児島の養殖業界の連携や取り組みをこれからも見つめていきたいと思います。
担当:MBC南日本放送 道山幸司

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう