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「はたらくくるま」で世界とつながる

ビジネス
福岡市博物館に展示されている現存する最古の国産自動車をご存じだろうか。
その名は「アロー号」。作者の矢野倖一の名から取られた。彼が起こした会社はいまも「矢野特殊自動車」として続いていて、様々な特殊車両を手掛けているのだ。 もっとも力を入れるのは冷凍車。実は国産初の冷凍運搬車を開発したのも矢野特殊自動車。九州の生鮮品を運んできた。そうしたお客さんの要求に応えていたら、全国に通用する技術が育った。近年、その冷凍車のクオリティをさらに上げるべく研鑽を重ねる。

最新の「アイスウイングXF」車ではコンピューター管理のサーマルアイネット(温度の目)導入でより高精度の管理を可能に。ところが、これにより逆に庫内の場所で温度にばらつきが大きいことが判明し、さらなる改良のきっかけともなった。

こうした改良は、少しでもドライバーの負担軽減になればという考えから。物流を支えるドライバーの不足が叫ばれる今、働きやすい環境を整えることで業界を支えたいという思いが大きいのだ。 そんな矢野特殊自動車、フランスや中国のメーカーと協力関係を結び、その技術が世界にはばたきつつあるという。
■取材先
会社名:矢野特殊自動車
住所:〒811-0123 福岡県糟屋郡新宮町上府北4-2-1
電話:092-963-2000
FAX:092-963-1555
HP:https://www.yano-body.co.jp/
会社名:菅原運送
住所:北九州市門司区新門司北2-2-8

取材後記

福岡から3号線で北九州方面に向かいIKEAを通り過ぎたあたりにある「矢野特殊自動車」の看板を見たことのある方も多いのではないでしょうか。創業者で現存最古の国産自動車を作り上げた矢野倖一の志を受け継ぎ、お客さんの要望をなんとか形にしようという熱意であらゆる種類の「はたらくくるま」特殊自動車を作り続けています。
矢野彰一社長が危機感を感じているのは、高齢化や激務などによる運送業界の人手不足・衰退。取材でお邪魔した菅原運送さんでは、ドライバーの方に「10トン車だとひと箱10キロの荷物を1000個手積みすることもある」と聞きこの仕事のハードさを実感しました。

そんな中、メーカーとして少しでもドライバーの皆さんが働きやすい車を作ることで業界に貢献しようというのです。そのためには自社で開発した技術や部品を他社に提供することも惜しみません。それを社長の人柄だと言った私にはにかんだように「私はそんないい人ではありませんし、ビジネスとしての計算もあってそうしてるんです」と語る姿がまた魅力的に映りました。厳しいビジネスの世界、理想を貫くのにもリスクや覚悟が必要だと思います。

そうした中で世界の企業と「同じ特殊車両を作る仲間だから」と信頼してつながっていく姿に、誇りを持って仕事をすることの大事さを教えていただきました。

担当:RKB毎日放送 寺井 到

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