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伝統文化つなぐ阿蘇のカヤ

ビジネス
阿蘇の草原を彩る「カヤ」を「屋根の資材」に。茅葺き屋根が立ち並ぶ古都・京都。伝統建築の関係者たちは今、文化財の維持・保存に頭を痛めている。屋根にかけるカヤを作る農家が後継者不足で減少、収穫できる草原も全国的に少なくなっているためだ。

一方、「草原の維持」が世界農業遺産に登録されている阿蘇。カルデラを黄金色に染めるススキなどのカヤは家畜の飼料や寝床などに使われているが大半は燃やされている。地元畜産農家の減少もあり、使われなくなった草原は増える一方。放っておけば森になってしまうため公益財団がボランティアを集め野焼きすることで草原をなんとか維持している状態だ。

そこで財団の支援企業「GSコーポレーション」の山本保孝さん(52)は野焼き前のカヤを買い取り、京都の茅葺き職人に販売することを思いつく。農家が冬にカヤを収穫・販売すれば農閑期の収入になる上、草原維持のモチベーションになるのではないか。とはいえ、茅葺き屋根の材料として売るには統一した大きさ、まとまった量、そして高い品質が求められる。伝統の継続に悩む地域を結び付けようと奮闘する山本さんとカヤの収穫・草原の維持に取り組む阿蘇の人々の取り組みを追った。
■取材先
会社名:GSコーポレーション
担当者:統括課長 山本 保孝
住所:熊本県阿蘇市小里656-1 阿蘇草原保全活動センター内
電話:0967-32-3500
HP:http://www.asogreenstock.com/

取材後記

阿蘇では放送日にちょうど一斉野焼きが行われます。広大な草原が炎に包まれ、その壮大な風景は観光名物にもなっています。

担い手不足が深刻な野焼きは現在、大勢のボランティアの人たちが手伝っています。
取材したGSコーポレーションの山本保孝さんはこの野焼きボランティアのリーダーを務めるのですが、最近は微妙な気持ちだそうです。
「燃やす前にカヤを刈りたい…」が本音だからです。カヤ=ススキがしっかり枯れて乾燥するベストシーズンも、野焼きをするタイミングも2月。野焼きは広範囲に火をかけるので、危険が付きまといます。
しかしカヤ刈をした牧野では火の勢いが緩和され、より安全に野焼きができます。もっとカヤを収穫したいので「野焼きの日、雨にならないかなぁ(雨だと野焼きは延期されます)」と、野焼きに携わる者にとっての禁句を思わず考えてしまう山本さん。それくらい真剣にこのカヤ事業に取り組んでいます。

そのモチベーションの源は、実際に阿蘇のカヤが使われている文化財を京都まで見に行った事。とても感動し、やる気につながったそうです。牧野組合の人も数人連れていき、その人たちも積極的にこのカヤ事業に参加されています。昨年末に再度、かやぶき屋根の文化財の視察に組合の人たちを連れて行く計画があり私も是非同行したいと思っていました。

しかし新型コロナの感染拡大で中止となってしまい、本当に残念でなりませんでした。いつの日にか私も京都へ行き、それをモチベーションにしてこの事業を影ながら応援したいと思っています。

担当:RKK熊本放送 友住修武

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