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変わらない地方議会…28年前の「議会の常識」と福岡県議会の今

潟永秀一郎

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最近、県外で「福岡出身」だと言うと、「あの」という顔をされたり、「大変ですねー」と言われたりします。県議会の問題がどれだけ福岡の評判を落としているか実感しますが、今回はこれにまつわるお話です。9月11日放送のRKBラジオ『立川生志 金サイト』に出演した元サンデー毎日編集長の潟永秀一郎さんが、自身の記者時代の経験を交えてコメントしました。

職員が質問を作り、答弁書まで用意する「なれ合い」

私も記者やデスクとして福岡県内で15年暮らし、少年時代の大半を福岡で過ごした息子たちは今も博多弁で、私は鹿児島出身ですが、家族にとっての古里は福岡です。だから、なおさら腹立たしく残念なんですが、その話の前に、記者当時の連載企画、その名も「議会の常識」という記事についてお話させてください。全6回で、1回目の書き出しはこうです。

「先生、今議会で考えられる質問項目は、だいたいこんなところです」。年に4回開かれる定例県議会の開会が近づくと、財政課の職員が一覧表を持って、議会控室を御用聞きに回る。本会議で質問に立つ議員へのサービスだ。9月定例会の一覧表は、次のような内容だった――

もちろん、実物を入手して書いたんですが、A4用紙2枚に各部局別の計70項目ほどがびっしり。ところが、マスコミに叩かれたり、市町村ともめたりした問題はどこにもなく、どうしても避けて通れそうにない問題は但し書きで、この方向から聞いてほしいという文言が付け加えられていました。記事の続きを読みます。

さすがに、議員の多くは参考にするだけだが、中には「これと、これと、この項目で頼む」と、質問まで職員に書かせる議員も。こうなると県庁はしめたもの。担当者は、自分たちに都合の良い話題をちりばめ、同時に答弁書まで作ってしまう。幹部級の議員だと、予算が付く予定の事業を質問させ、(先生のおかげで予算が付いた、と)花を持たせることもある。

さらに続きがあって、

「でもねえ、まだ質問に立つ議員はいい方ですよ」と県OB。議場での一般質問は全議員に年1回は回るように日程が組んであるが、この権利を同僚に譲ってしまう議員が少なくない。改選後の3年半では、7回の1人を筆頭に4回以上質問に立った議員が23人いる半面、1回が6人、ゼロも2人いる。ベテラン議員ほど少なくなる傾向があり、県OBはこう言う。「議場で質問しない人に限って、裏での頼みごとが多かったりするんですよ」

 ――と、ここまでが1回目。

2回目のタイトルは「原案通り可決」。この年、ある土地買収で、本来は議会の承認が必要なのに、土地を3分割して議会の承認がいらない価格にして審議逃れしたり、補助金の支出要綱を改正する前に上限を超える金額の補助を出したり、厳密に言えば違法な支出をしていたものまで、「追認」という形で原案通り可決した例を挙げ、こうした緊張感のなさが居眠りに現れる、と私が実際に控室で聞いた議員の自慢話を載せました。「審議中に居眠りする議員は大勢おるが、委員長で寝たのは、俺ぐらいのもんやろう」 笑うに笑えない話ですが、その後もオンパレードです。

「視察天国」と非公開だった政務調査費

3回目のタイトルは「視察天国」。そう、福岡でも問題になった「視察」です。当時この県では、国内の視察費が4年の任期中に議員1人当たりおよそ300万円、海外が同じく130万円。

県外では北海道と東北、県内では観光地の視察が多いので、議会事務局に「なぜですか?」と聞くと、「決して物見遊山ではありません。計画書に基づいて行動し、各委員会の所管事項に関する視察先で説明を受け、終了後は報告書も出ています」と言うので、議会図書館で報告書を閲覧したら、こんなのがありました。

東北視察の中で岩手県の運転免許センターを訪ねた、とあるんですが、報告書に書かれていたのは「業務内容①試験=大型、普通、大特、大型二輪、普通二輪、けん引、原付その他②更新=県内に住所を有するもの、有効期限の1か月前から受理」って、これ全国一緒ですよね(笑)。

それでもまだ、視察は報告書が義務付けられていますが、4回目の「政務調査費」は、当時で年間2億円近くが議員や会派に配られていたにもかかわらず、その使途は議員に委ねられて、一切非公開でした。

ネタ晴らししますが、この連載を私が書いたのは1998年、今からもう30年近く前のことです。舞台は、長崎県議会でした。ですから、今回の福岡県議会の問題を知って私が最初に感じたのは、「何も変わっていないな」ということ。そして、程度の差こそあれ、似た問題は今も少なからぬ地方議会が抱えているんじゃないか、ということです。

その後、長崎県で政務調査費の使途が窓口閲覧できるようになったのは2001年から、ネット公開は2014年から。視察報告書のネット公開は2016年分からでした。一方、福岡県議会はというと、政務調査費の窓口公開は長崎から1年遅れの2002年から、ネット公開も同じく2015年から。海外視察報告書に至っては、現職議員になって以降の2023年度分から、ようやく今年8月までにホームページ上で見られるようになりました。

情報公開と議会改革を進めた「二人の知事」

ただ、これらの情報公開は2000年の地方自治法改正に負う所が大きく、議会の自浄作用とは言い難い面があります。改正は、それまで法的根拠のなかった政務調査費について、交付できる根拠を国が法的に定めたもので、その代わりに自治体側は支給額や公開方法などを条例で定める必要性が生じたからです。

ところが、このタイミングで一気に情報公開を徹底した県もありました。鳥取です。全国に先駆けて情報公開を進めていた当時の片山善博知事のもと、2001年から1円以上のすべての領収書添付と窓口公開を義務付けたんです。

また、北川正恭知事のもとで「議会改革」を進めていた三重県では、2007年から同じく1円以上の領収書添付と公開を義務付け、しかも同時に議員の海外視察の廃止まで踏み込みました。

私が尊敬する二人の知事ですが、改革はカネの問題にとどまりません。私が28年前の連載で書いた議会と役所のなれ合い、緊張感のなさについても、お二人は既に当時、改革に取り組んでいました。

例えば、鳥取の片山知事は、議員からの質問と行政側の回答を事前にすり合わせる「事前調整」を「やめる」と宣言し、議場の外での根回しを拒否しました。結果として、本会議や委員会はシナリオのない緊張感のある「政策論争の場」となり、議員は独自の調査能力を磨く必要に迫られました。

また、北川知事も同じく事前調整を禁止したうえで、2000年の議会から、議員の質問通告書を質問前日の午後に県のホームページで公開する仕組みを作りました。根回しのないガラス張りの論争を実現するだけでなく、県民が質問内容を知ることで、議会に関心を持ってもらう意味もあります。

ガチンコ勝負を生む「反問権」と「議会基本条例」

さらに感服するのは、二人はこうした改革を進めながら、トップが長く権力の座にとどまる「多選の弊害」を指摘し、共に当選確実なのに「2期8年」でスッパリ引退したことです。けれど、県民が強く支持したその改革の姿勢は、どちらも後継者に引き継がれ、とりわけ三重県では、続く野呂昭彦知事時代に、全国の都道府県議会で初めて、議会の責務や執行部との関係性などを定めた「議会基本条例」を制定し、今や全国1000以上の自治体が制定する基本条例のベースになっています。

その中身で特筆すべきは、議員の質問に対して、知事ら答弁に立つ側が「質問の根拠は?」などと、逆に質問できる「反問権」を導入したことです。これで議場はガチンコ勝負になります。

こうして議会側に厳しく対峙する一方、それまで行政側が決めていた県の基本計画などについて、「議会の議決がなければ決定・執行できない」と条例で定め、議会が共に県のビジョン作りに取り組む仕組みを作りました。

また、就任当時36歳だった次の鈴木英敬知事時代には、議会の会期中以外でも議員が県政の問題や疑惑などについて質せる「文書質問制度」を導入しました。質問書が出たら知事は必ず「回答書」を提出し、ネットで公開しなければならないという仕組みです。

基本条例を持たず裏金まで出していた福岡県議会

かたや、福岡県ではご存じの通り、つい最近まで高額な海外視察が繰り返され、それどころか、任意の集まりである議員連盟に対して毎年度、上限1200万円の補助金を出していたことも発覚しました。全国で福岡県だけ、公開義務のない「第二の政務調査費」=もっとはっきり言うと「裏金」を支出し続けていたわけです。

一方で福岡県議会は、九州の県議会で唯一、議会基本条例を持たず、ですから執行部の反問権も導入しておらず、文書質問制度はあるものの、質問書と回答書がセットで公開される仕組みもありません。

もっとも、議会基本条例を制定していないのは、福岡のほかに東京や埼玉、山口など14都県あり、政令指定都市でも仙台、大阪、熊本の各市は未制定です。ただ、福岡県議会で今回これだけの問題が噴出したのは、制度の不備もさることながら、それ以前に議会と行政のなれ合い、緊張感の無さが大きいと、私は思います。28年前の長崎がまさにそうでしたから。今は違うと信じたいですが。

最後に、28年前の連載最終回、当時の若手県議は「有権者も、頼み事への対応や冠婚葬祭への出席でなく、議員を政策能力で評価してほしい」と話しました。ただ、そうした特定の利害や関係性で議員が当選できる最大の要因は、投票率の低さです。

前回、2023年の福岡県議会議員選挙の平均投票率は35.5%。無関心が、なれ合いや議員の特権を20年以上放置し、改革を進めてきた自治体との差をここまで広げました。

今回は西日本新聞のスクープをきっかけに、ほぼ全メディアの報道合戦となって、次々に問題が明るみに出ました。その意味ではメディアの役割も大きく、福岡では議会の実態を調べなかった我が身の不明を恥じます。

ただ程度の差こそあれ、事はおそらく福岡県議会だけのことではありません。皆さんの住む市区町村はどうですか? 県外で聴いてくださっている方があれば、皆さんの県はどうですか? 議員だけでなく、知事や市町村長は行財政改革や情報公開に熱心ですか?

来年は統一地方選挙の年です。どうか関心を持って、確かな情報に基づいて、投票に行ってください。福岡に限らず、後ろ暗い議員や首長がいま一番望んでいるのはきっと、有権者が忘れてくれること、だからです。

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この記事を書いたひと

潟永秀一郎

1961年生まれ。85年に毎日新聞入社。北九州や福岡など福岡県内での記者経験が長く、生活報道部(東京)、長崎支局長などを経てサンデー毎日編集長。取材は事件や災害から、暮らし、芸能など幅広く、テレビ出演多数。毎日新聞の公式キャラクター「なるほドリ」の命名者。