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種子島で循環する 廃食油エネルギー

種子島のNPO法人「こすも」では2006年から使用済の食用油=廃食油を原材料に、バイオディーゼル燃料を製造している。
バイオディーゼル燃料とは、トラックや重機などの燃料となる化石燃料=ディーゼルの代わりとなる燃料で大気汚染の原因となる黒煙の発生量が非常に少なく、地球に優しい燃料といわれている。こすもではこれを、送迎用の車両などに燃料を使用している。

しかし、製造を担当しているNPO法人こすもの松岡拓郎さん(39)は、当初は、品質のばらつきや、副産物の石鹸の処理などの課題があり、車両に不具合が生じるなどうまくいかないことも多かったと語る。

そこで出会ったのが、東北大学の北川尚美教授(55)の研究。「イオン交換樹脂」を触媒とした製造技術の導入により、高品質の燃料が製造できるようになった。
また、2014年からは西之表市との連携により、一般家庭用廃食油の回収も行われていて、実用化に向けた研究を進めている。
今や島内9割の飲食店などの事業所から廃食油を回収し、島を巻き込んだ取り組みとなっている。

物やエネルギーが限られる離島だからこそ資源を繰り返し利用する「循環型社会」の実現を、産学官一体となって目指す種子島の取り組みを紹介する。
取材先①:NPO法人こすも
担当者:松岡拓郎
住所:〒891-3432 鹿児島県西之表市安城3680-350
電話:0997-28-3350
取材先②:東北大学大学院工学研究科化学工学専攻
担当者:北川尚美
HP:https://www.che.tohoku.ac.jp/~rpel/ 住所:〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-07
電話:022-795-7256

取材後記

種子島といえば、美しい海、おいしい農作物、そしてロケット基地。
自然豊かな種子島で、環境に対する意識が高まるというのは、ごく自然に思えた。
バイオディーゼルといえば、地球に優しい燃料と言われる。捨てるはずだった食用油を使って、燃料ができるなんて、無知な私は、みんなすぐにでもそうすればいいのにと思った。しかし、全国で導入した事業所などは次々に撤退。それほど、バイオディーゼル燃料を製造するということは、課題が多いのだ。

そんな中、東北大学の北川教授はビーズ状の樹脂を使うという手法で、世界で初めて廃食油からバイオディーゼル燃料を製造することに成功した。
これまで課題だった不純物の処理などを全てクリアした技術だ。一気にバイオディーゼル燃料が広がりを見せるかと思いきや、コスト面や、管理する人が必要という新たな問題に直面し、企業への導入は進まなかった。

北川教授が「もうバイオディーゼル燃料についての研究をやめよう」と思ったときに出会ったのが、NPO法人こすもの松岡副所長。松岡さんは、種子島から宮城県に足を運び、技術を使わせてほしいと北川教授に直談判。
熱意が伝わり、北川教授が種子島でのバイオエネルギー製造に関わるようになり、さらに行政と共に実証実験開始して約8年。途中新型コロナの影響により、実験ができない時期もあったというが、この夏からようやく市の所有するタイヤショベルにバイオエネルギーを導入するなど、実用化に向けた動きが確実に高まっている。

技術が作られてから長い年月が経ち、ようやく一歩を踏み出そうとしている種子島でのバイオディーゼル燃料。これからの広がりに注目だ。

(MBC南日本放送 / 久保美紗恵)

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