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地球に優しい「薪ビジネス」

かつては囲炉裏やかまど、風呂の熱源など日常で使われていた「薪」。一時は衰退したが、近年はその温かみや地球温暖化防止の観点から薪ストーブなどを使う人が増え、供給が追い付かない状態になっている。

薪は伐採した木材を自然乾燥させる手法が主だが、九州の高温多湿な環境では使える状態になるまでに1~2年かかる。これに目を付けたのが独自の「乾燥システム」を開発した阿蘇市の「九州バイオマスフォーラム」。開発者の薬師堂謙一さん(66)は、40年以上バイオマス研究に取り組むエキスパートだ。

そのシステムとは屋外にビニールハウスのような温室状の「薪の保管バッグ」を設置、太陽光とファンの風で乾燥させた後、地域の木の廃材や木くずをボイラーで燃やして発生する熱を温風に変え、乾燥させるという至ってシンプルなもの。だが3か月程度で薪が出来上がり、時間短縮がはかれるため年間2~3回の出荷が可能になった。

また石油などの燃料を使わないため二酸化炭素の排出量抑制にもつながる。さらにこの温風乾燥システムを応用して発電施設で出る熱を使って果実栽培やドライフルーツ作りに活用したいたいという他社からのオファーも。
「薪ビジネス」の可能性を追った。
取材先:NPO法人 九州バイオマスフォーラム
担当者:理事長 薬師堂謙一さん
住所: 〒869-2612 熊本県阿蘇市一の宮町宮地5816(アゼリア21駐車場敷地内)
TEL:0967-22-1013
HP:https://kbiomass.org/

取材後記

今回の主人公の薬師堂さんが生まれた昭和30年頃は家電製品や車が少なく、自然と共存していた部分も多かったという。その後石油などの化石燃料を使った生活が急速に進み、便利にはなったが環境問題が生じた。
薬師堂さんは40年以上、生物由来の有機性資源「バイオマス」の研究を続けてきたスペシャリスト。非常に研究熱心で周りから「食事をするのも忘れているのではないか」と心配されるほど。
今回の開発もその研究の延長線上にあり、シンプルだがとても画期的なもので「技術は惜しみなく提供し世の中に広げていきたい」とおっしゃっていた。

今回の取材中には、幼い頃祖父の家に遊びに行くと「薪」で風呂を沸かすことが楽しみだったことを思い出した。どうやったら火が上手く起こせるのか、どんな木がよく燃えるのか、夢中になり、じーっと燃える様子を見て楽しんでいた。子どもながら「炎を見る癒やし」を感じていたのだと思う。

「薪ストーブ」や「キャンプ」ブームで「生活必需品」というより「贅沢な時間の使い方に必要なもの」として活用されている「薪」。
薬師堂さんは今の合理的な生活は必要としながらも環境に優しい「薪」を使った生活も広がればと願い、今後も自然環境に優しい乾燥技術の開発を続けていくそうだ。

(RKK熊本放送/内藤 郁美)

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