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佐々木朗希の13連続奪三振を“超える”プロ野球記録があった!?

史上最年少20歳5か月で完全試合を成し遂げた千葉ロッテの佐々木朗希投手は、同時に13者連続奪三振というプロ野球記録も樹立した。しかしプロ野球の歴史には「13」を超える記録があるという。RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演した、スポーツ文化評論家・玉木正之氏が解説する。  

“15連続奪三振”の記録を持っているのはあの大投手

田畑竜介アナウンサー(以下、田畑):きょうの話題は佐々木朗希投手になりますよね。

 

玉木正之さん(以下、玉木):それしかないでしょう。私は今も興奮しています。

 

田畑:やっぱり玉木さんも興奮しましたか。

 

玉木:ええ。(記録達成を)聞いてから、慌ててそこらじゅう映像探しましたよ。見なきゃいけないということで。

 

田畑:今年の佐々木朗希投手への期待はすごく高かったじゃないですか。

 

玉木:一昨年、1年目のときは2軍でも全く投げなかった。去年はチラっと出てきて、これは今年いけるんじゃないかと。千葉ロッテもなかなか粋な育て方をしたというか。ただ、この「13者連続奪三振」って、実は日本新記録と言えるのかどうか…。

 

田畑:どういうことですか?

 

玉木:15連続奪三振というのをやった人がいるんです。1971年のオールスター戦で江夏豊投手が達成しています。オールスター戦というのは最大9人の打者にしか投げられないんです。その年のオールスター戦で江夏投手は第1戦で9人連続三振、そして第3戦でまた三振を1つ取ったので10人連続奪三振。さらに調べてみたら、前年のオールスター戦で5連続奪三振やっているんです。全部足すと15連続になるんですね。

「日本新記録は王さんから取る」そのために江夏投手は…

田畑:いま玉木さんは自宅からリモート出演していますが、部屋に江夏投手のユニフォームが飾ってありますね。

 

玉木:そうです。これは江夏投手が引退試合のときに着たユニフォームです。江夏投手はほかにも、1968年にシーズン401奪三振という日本記録を持っています。

 

田畑:401ですか!今200超えればすごい、っていうところですが。

 

玉木:投げるイニングが昔は多かったですからね。江夏投手の前の日本記録はシーズン354奪三振、これは福岡ゆかりの西鉄ライオンズの稲尾和久投手でした。この記録を破るとき、江夏投手は「王(貞治)さんから新記録を取る」と宣言していました。で、実際にそうなったんですが、実はその1つ前の打席で、王さんを相手に354奪三振の日本タイ記録を取っていて「新記録を王さんから取るにはどうしたらいい?」ということで、江夏投手は王さんの後の8人のバッターを全員(三振ではなく)打たせてアウトを取るんですね。

 

田畑:それを自在にコントロールするってすごいですね。

 

玉木:すごいですよ。8人のバッター全部打たせて取って、それで王さんからまた355個目の新記録を取ったんです。おまけにこの試合、0対0のまま延長戦になって、サヨナラヒットを江夏さんが打ってるという。何と言っていいかわからないね、これ。佐々木朗希くん、まだまだやることありますから頑張ってください(笑)

日本球界でたった1人しか持っていない記録とは?

玉木:佐々木投手は完全試合も達成しましたが、これ16人目ですよね。逆に言うと15人も過去にいたんだと。日本で一番すごい大記録で、たった1人しかやったことがないものって何だかわかりますか?

 

田畑:何でしょう?1人しかやっていない?

 

玉木:これはなかなか想像つかないでしょうけど、正解は「1人トリプルプレー」。これは阪急ブレーブス、今のオリックスなんですけれども、坂本選手という二塁手がやってるんです。このときランナー1・2塁。そこにセカンドにライナーが飛びました。その球を捕って1アウト。それから自ら2塁ベースを踏んで2アウト。さらに1塁に引き返していたランナーを追いかけ、タッチして3アウト。面白いでしょ。これ日本のプロ野球ではたった1人しかやっていないんですが、なぜかアメリカでは10人以上やっているらしいんです。「アメリカのランナーはよく飛び出すのかな」なんて思ってしまいましたけど。

個人プレーを重んじてこなかった日本のプロ野球

玉木:やっぱり野球の醍醐味っていうのは、こういう記録の面白さがあるんですけれど「奪三振王」が表彰されるようになったのは、パ・リーグでは1989年から、セ・リーグは1991年からなんです。

 

田畑:以前はあまり注目されなかったんですか?

 

玉木:注目はされていたんですが、表彰されていなかったんです。当時、私はスポーツライターとして「奪三振王も表彰しなさい」と散々書いたんですけど、何と言われたと思います?

 

田畑:三振はそんなに華がないみたいなこと言われたんですか。

 

玉木:いや、その逆で華があり過ぎるんです。要するに「個人プレーに走るからダメだ」って。でもね、考えてみたら三振取っても1アウトですよね。チームの勝利に近づきますよね。野球っていうのは個人のプレーがチームに貢献するんですよね。その辺りが、サッカーやラグビーとは違うチームプレーになっています。しかし、日本の野球はチームプレーの方ばかりを強調したという歴史があるんです。だから1人の活躍っていうのはあまり認めないと。江夏投手も「自分勝手なことをする」ということをよく言われた選手で、なかなか認められなかったんですよ。私はそういう選手が大好きだったんですけれどもね。

 

田畑:玉木さんの部屋にもう1枚ユニフォームが飾られていて、それが野茂英雄投手のものなんですけども、やはり野茂投手が三振をどんどん重ねていった姿にも華がありましたよね。

 

玉木:華があるどころじゃないですよね。トルネード投法であれをやられたら、もう痺れてしまいますよね。私はアメリカ・ロサンゼルスで野茂さんが投げている試合を観たんですが、3回まで三者凡退だったんですよ。それで私の前で観ていたスポーツライターの大先輩である佐瀬稔さんに「完全試合いくよ完全試合」って言ったら、佐瀬さんは「馬鹿野郎、俺は2回からそれを思っていた。今頃、何を言っているんだ」って。そんな会話をしていたら、隣にいたテレビ局の方が「(完全試合)できるわけないじゃないか」とか言ったんですよ。これは野球を観る態度としては最低ですね。そんな、変に通ぶった見方をするのではなく、思い切り興奮して観たいですよね。

 

 

田畑:そういう意味では、佐々木朗希投手がこれから記録も含めてどんなプレーを見せてくれるのか楽しみですね。

 

玉木:なんか怖くなってくるような感じです。あと一つだけ付け加えておきますと、ソフトバンクの甲斐選手。素晴らしいトリプルプレー打を打ちましたね。

 

田畑:そこ触れます?(笑)

 

玉木:三重殺打。私はあれ大好きなんですよ。打球が早くないと三重殺にならないですからね。ゆっくりだったら2つアウト取っているうち、1塁到達しますからね。だからこれもまた素晴らしい記録だと思います。

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