PageTopButton

「統一教会」政界浸透~自民党の元選挙スタッフが語る問題点とは

旧統一教会との関係がたびたび批判された大臣が、とうとう更迭された。政権に批判的な立場の人々からだけでなく、保守をもって任じる人たちからも、教会との関係をつまびらかにしようとしない自民党に、強い批判が出ている。RKB報道局の神戸金史解説委員は、知人の保守活動家に話を聞き、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で紹介した。  

鈴木エイトさんの衝撃的な著書

今、この本が話題になっています。「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」(小学館、10月1日、税別1600円)。著者は鈴木エイトさん。よくテレビに出ていますよね。本の表紙にあるように「圧力に屈せず追及し続けたジャーナリスト」。「安倍元首相と教団 本当の関係」なかなか惹かれるコピーですね。読んでみました。

 

「国会議員168人リスト公開!」ということで、様々な国会議員が出てきます。単に祝電をイベントに送ったというレベルだけではなく「総裁と会っている」とか、旧統一教会と政治家の関係には濃淡があると思います。「追跡3000日」と鈴木さんは取材を拒否されながらも長く追っているので、政治家たちが徐々に関係を深めていったことが、よくわかります。

 

その冒頭に出てくるのが、福岡の話だったんです。

福岡選挙事務所で起きたこと

エイトさんの取材によると、2013年夏の参院選直前、旧統一教会は全国の信者に向けて内部通達をFAXしていました。全国の比例区に出ていた候補について「まだCランクで当選には遠い状況です。(略)今選挙で当選させることができるかどうか、組織の『死活問題』です」という内容だった、と書いています。福岡の話は、この後です。一部引用します。

陣営の福岡選挙事務所の手伝いをしていた若手保守運動家によると、選挙運動期間中、秘密裏に福岡県内の統一教会の地区教会2か所に赴き礼拝に参加、講演を行ったという。教団担当者から福岡事務所の選対部長宛てに送信されたFAXにはこう印字されている。

 

「お世話になります。7/10(水)の集会、宜しくお願い申し上げます。久留米教会は19:30より30分間、福岡教会は21:00より始めます。恐れ入りますが、それぞれ20分ほど前に御到着いただければ幸いです」
久留米、福岡からこの本はスタートしています。

若手保守運動家「投開票日までいられない」

これを見ると、福岡もかなり統一教会の活動が盛んだとわかります。この「若手保守運動家」とは、近藤将勝さん。大学生のときから北朝鮮の拉致被害者救出運動にかかわり、企業情報会社勤務の後でフリーランスライターをしてきました。現在は市民団体の代表をしています。
保守活動家だというので、興味をもって2016年に居酒屋で話をしたんです。そういう関係もあったので、取材に協力したという近藤さんに10月24日夜、電話で話を聞いてみました。参議院選挙で、福岡事務所にボランティアスタッフとして近藤さんが入った時のことです。

近藤さん:6月から(候補の福岡事務所に)行き始めて、7月の末、参院選の投開票日の前日までです。前日に「もう事務所を辞めます」と。理由は統一教会との関係があって、自分としてはそういうことを何か後押ししているみたいになってしまうので、それはやはり自分の良心にもとるっていうことで。
ボランティアで選挙を手伝う中で、統一教会の影が見え隠れしている。実際こういうのを見たりすると「ちょっと、これはいかん」と思ったということですね。

統一教会の3つの問題

近藤さんは、統一教会の問題点を3つ挙げてくれました。

(1)統一教会のやり方として「正体を隠して勧誘する」ということ。ちょっと前まで、福岡で言えば天神の街頭で、統一教会と名乗らずに「手相を見ます」「アンケートです」と勧誘をしたりして。近くのマンションの一角にそのビデオセンターなる施設があり、まっすぐ連れて行って、セミナーに勧誘して次第に洗脳する形で信者にしていく。学生の原理研の場合も、大学で「社会問題について考えませんか?」。最近だったらSDGsを打ち出したりして、その辺りから巧みに入り込んでいくっていうやり方を取っている。

 

(2)政治的な部分。確かにいろいろな考え方があっていいと思うが、自民党が統一教会となぜ関係を持つか。いわゆる反共主義、反左翼を掲げているところに共通点があって「それ自体は問題ないんじゃないか」という考え方もあるかもしれないが、これは誰の利益になる考え方なのか。「外国の内政干渉を受ける」というところがある。

 

(3)女性の尊厳が全然なく、男性上位。今、統一教会・勝共連合がやっている、LGBTに対する人権擁護に反対したり、夫婦別姓に反対したり、そういうところとつながってくる部分がある。統一教会・勝共連合が自民党の政治家に関わって与えた影響というのは、かなり大きいと思う。
男性が優位になるのが、統一教会の教義の中には濃厚にあるんです。聖書に出てくる男性「アダム」の国家が韓国で、女性は「エバ(イブ)」、日本はエバ国家だから、アダム国家の韓国に尽くさなければならない、という形で献金が大量に韓国の方に流れています。近藤さんは保守系の方なので、ちょっと突っ込んで聞いてみました。

「保守なのに批判するのか」に反論


神戸:近藤さんご自身は保守思想家です。一致するところは、あるんじゃないですか?

 

近藤:一致するというか、似ているところは確かにあるんですよね。ただ、彼らと私はどこが違うか。やはり、日本人は日本の考え方がありますよ。長い歴史の中で育まれてきた部分がありますから。それは、明治維新の後に出てきた考え方もあるかもしれませんけど、それ以前から、私たちの生活習慣など馴染んでいるものが、おそらく本当の意味で日本の伝統とか価値観だろうと思うんですけど、それと統一教会の教えていることはどうなのか。かなり乖離(かいり)があるんです。アダム国とエバ国、日本はそういう存在だから貢ぎなさい、みたいなね。本当に、ここを一番本質として捉えないといけないのかな、と。
私も古い人間なので、歴史が好きで、江戸時代の文化とか大好きなんです。明治維新以前から、日本人にずっとあったもの。近代国家になって分かりにくくなっているものが好きなので、近藤さんのおっしゃることはよく分かりました。

 

外国のなす内政干渉に当たるんじゃないか。女性の尊厳が全然認められてないじゃないか、こういうことを保守的な立場にいる方がおっしゃると「なるほどな」と逆に思ったりもしましたね。

解散求める電子署名の「呼びかけ人」に

近藤さんは今、鈴木エイトさんたちと統一教会の解散を求め、宗教法人格も取り消すよう求めるインターネット上の電子署名活動をされています。呼びかけ人に、鈴木エイトさんも近藤さんもなっている。今見ると、16万4000人あまりが署名している状況です。

 

保守的な立場でありながらこういう活動をするのはどうなんだ? という意見も受けているようですが「本来の保守の立場であれば認めるわけにはいかない」という姿勢です。

 

最初に紹介した「自民党の統一教会汚染」。エイトさんは最後の方で、こんなことを書いています。

個々の疑惑の積み重ねが一つの絵となるケースもある。パズルだけでなく網点にもたとえることができる。網点のように濃淡と点を置く場所を考えつつ、一つ一つ判明した事実を置いていく。その“点”の集合を少し離れて見るとやはり一つの絵が見える。(中略)パズルのピースを埋めていくことにより一群の像として可視化されていくのだ。
確かに、この本を読んで、私もそういう印象を持ちました。

パズルのピースが全て埋まった時、そこには果たしてどのような絵が描かれているのだろうか。
鈴木エイト著「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」(小学館、税別1600円)
https://www.shogakukan.co.jp/books/09380123
 

神戸金史(かんべかねぶみ) 1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKB毎日放送に転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材して、ラジオ『SCRATCH 差別と平成』(放送文化基金賞最優秀賞)やテレビ『イントレランスの時代』(JNNネットワーク大賞)などのドキュメンタリーを制作した。

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう